一般相対性理論のテンソル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 14:37 UTC 版)
「一般相対性理論の数学」の記事における「一般相対性理論のテンソル」の解説
「テンソル」も参照 相対性理論の深い結論のひとつは、特権を持つ座標系(英語版)(privileged reference frames) の廃止である。物理現象の記述は、誰が計測するかには依存すべきでなく、つまり、どの座標(標構)も他の座標(標構)と同様であるべきである。特殊相対性理論は、すべての他の慣性系に優先する特別な慣性系が存在しないことを示しているが、それでも慣性系は非慣性系よりは優遇されている。一般相対性理論は慣性系の優先性をもなくし、自然を記述する優先された座標系は(慣性系か否かを問わず)存在しないことを示した。 任意の観測者は測定をすることで、その観測者が使っている座標系のみに依存した数値を得ることができる。このことは、(観察者により表現される)座標系には依存せず、独立性をもつような「不変構造」を使い相対性を定式化する方法を示唆している。この不変構造を表すのに最も適切な数学的構造はテンソルであるように思われる。たとえば、加速している電荷により生成される電磁場を計測するとき、その値は使う座標系に依存するが、電磁場自体は座標系からは独立しているとみなされる。この独立性は電磁テンソルにより表現される。 数学的には、テンソルは線型作用素を一般化した多重線型写像である。線型代数の考え方はテンソルの研究において役立つ。 多様体M 上の任意の点 p {\displaystyle \scriptstyle \,p} において、この多様体への接空間と余接空間を構成することができる。ベクトル(反変ベクトルと呼ばれることもある)は接空間の元として定義され、余ベクトル(共変ベクトルと呼ばれることもあるが、通常は双対ベクトルや 1-形式と呼ばれる)は余接空間の元である。 点 p {\displaystyle \scriptstyle \,p} において、これら 2つのベクトル空間を使って ( r , s ) {\displaystyle \scriptstyle \,(r,\,s)} 型テンソル、すなわち、 r {\displaystyle \scriptstyle \,r} 個の余接空間のコピーと、 s {\displaystyle \scriptstyle \,s} 個の接空間のコピーの直和の上に作用する実多重線型写像が構成される。そのような多重線型写像のすべての集合はベクトル空間を形成し、点 p {\displaystyle \scriptstyle \,p} でのタイプ ( r , s ) {\displaystyle \scriptstyle \,(r,\,s)} のテンソル積空間と呼ばれ、 ( T p ) r s M {\displaystyle \scriptstyle \,(T_{p})^{r}{}_{s}M} で書き表される。接空間がn 次元であれば、テンソル積空間の次元は dim ( T p ) r s M = n r + s {\displaystyle \scriptstyle \dim(T_{p})^{r}{}_{s}M\;=\;n^{r+s}} であることを示すことができる。 一般相対性理論の記述には、テンソルの成分の記法を使うと便利である。 (r , s) 型テンソルは、 T = T a 1 … a r b 1 … b s ∂ ∂ x a 1 ⊗ … ⊗ ∂ ∂ x a r ⊗ d x b 1 ⊗ … ⊗ d x b s {\displaystyle T\;\!=\;\!{T^{a_{1}\ldots a_{r}}}_{{b_{1}}\ldots {b_{s}}}{\frac {\partial }{\partial x^{a_{1}}}}\otimes \ldots \otimes {\frac {\partial }{\partial x^{a_{r}}}}\otimes dx^{b_{1}}\otimes \ldots \otimes dx^{b_{s}}} と書き表すことができる。ここに ∂ / ∂ x a i {\displaystyle \scriptstyle {\partial }/{\partial x^{a_{i}}}} は 第i-番目の接空間の基底であり、 d x b j {\displaystyle \scriptstyle dx^{b_{j}}} は 第j-番目の余接空間の基底である。 時空を 4次元とすると、各々のテンソルの添字は 4つの値のうちの一つをとる。従って、テンソルの元の全体の個数は、4R である。ここにR はテンソルの共変と反変の添字の数の和であり、テンソルのランクと呼ばれる。
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