宮型から洋型へのシフト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 01:44 UTC 版)
宮型霊柩車は数を減らしているが、その理由としては以下のような問題が挙げられる。 宮型霊柩車が忌避されるようになった 宗教・思想の多様化への対応:宮型は仏式・神式の葬儀にしか用いないが、洋型は宗教・宗派を問わず使用でき、仏式・神式の葬儀にも使用できる。昭和天皇の大喪の礼の際も洋型が使用された。 見た目が忌避される:日本人の宗教観や葬儀に対する意識の変化、ライフスタイルの変化(都市化や核家族化、家族葬などの流行など)から、近年は(遠目からはランドゥトップ化したステーションワゴンにしか見えない洋型とは対象的に)外観が目立ち過ぎる宮型への忌避感が強くなった。 自治体が運営する火葬場を中心に、地元住民への配慮で宮型霊柩車の乗り入れを禁止する例が増加していること。特に住宅地に近い新設斎場に関してはこの傾向が強い(例:名古屋市立第二斎場。従来の八事斎場は乗り入れ可能)。 宮型霊柩車の製造・購入・維持が難しくなった コスト面の問題:重量の嵩む宮型霊柩車は、ベース車も重量・用途に耐えうる高額で頑丈な車両が必要となる上、職人による手作りで複雑な装飾・架装がなされることから、洋型霊柩車と比較しても車両価格が高額となる。これに加え、毎年払う自動車税や車検費用などの固定費を差し引いたら、宮型の利用が少なくなれば赤字になる。 そもそも適切なベース車がない:そもそも霊柩車の製造自体遺体を乗せるためリムジン化を伴う大規模な改造ではあるが、宮型はそこに加えピックアップトラック様にもしなければならない。そのような改造をするとなるとモノコック車よりラダーフレーム車のほうが容易だが、一方のベース車は軽量化を企図してモノコック化(トヨタ・クラウンの場合、S150系(1995年~)よりモノコックボディを採用)が推進されている。 保安基準上の問題:特種用途自動車である霊柩車であっても、ベース車が乗用車であれば乗用車の外装突起規制が適用されるため、2009年(平成21年)以降に製造された車両では適用される保安基準のうち「外装突起規制」を満たせず登録することができない。つまり実質上「国から宮型霊柩車の新造を禁じられる」事態になった。 維持管理の問題:保安基準の改定により、ベース車が実質上2008年式以前に限定されるため、車両老朽化に対しても一般の旧車同様、補修パーツの絶版により維持修理が困難となる。また架装部分に関しても、彫金・木工職人の減少や高齢化で維持管理が難しくなっている。 こうした理由から、増車や経年劣化等による車両更新の際に、フレキシビリティに富んだ洋型に代替する業者もあり、葬儀社も宮型の取り扱いをやめるなど、宮型を選びたくても選べない状況になりつつある。
※この「宮型から洋型へのシフト」の解説は、「霊柩車」の解説の一部です。
「宮型から洋型へのシフト」を含む「霊柩車」の記事については、「霊柩車」の概要を参照ください。
- 宮型から洋型へのシフトのページへのリンク