定義・経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/24 02:23 UTC 版)
共生星という名称は、生態学用語で、異なる種類の生物が一方的あるいは相互の利点のために密着して生活していること、を意味する「共生(symbiosis)」が由来であり、ポール・メリルが命名した。メリル本人によれば、1941年に自身が執筆した論文が初出である。それ以前は、「結合スペクトル」星などと呼ばれていた。 共生星の起こりは、ヘンリー・ドレイパーカタログの編纂に際し、HD 221650に特異なスペクトルがみられるという注釈が付いたことにある。その後、この恒星は変光星であることがわかり、アンドロメダ座Z星(英語版)と命名され、ジョン・プラスケット(英語版)によって恒星のスペクトルと星雲のスペクトルを併せ持つことが示された。1930年代には、メリルが幾つかの変光星に同様の特徴がみられることを明らかにし、共通する成分を特定していった。 メリルの定義では、スペクトルに酸化チタン分子(TiO)の吸収帯とヘリウムイオン(He II)の輝線が両方含まれることが、共生星の条件である。TiO吸収帯は、M型星に強く現れる成分で、He II輝線は、OB型星といった高温度星で観測される成分である。M型とO型は、恒星の表面温度でいうと低温と高温の極限であり、そのようなかけ離れた特徴が共存することが、共生星の特徴となる。 メリル以降、1950年代から1960年代に共生星の研究が進展したことを受け、アレクサンドル・ボヤルチュク(ロシア語版)やデイヴィッド・アレン(イタリア語版)が定義を練り直していった。新しい定義では、 晩期型星の吸収スペクトル、具体的にはTiO吸収帯や金属原子・1階電離イオンの吸収線、がみえること 高度に励起されたイオンの輝線が、ドップラー幅100km/s以下でみえること 青色の連続光がみえること 恒星状の天体であること 輝線には、電離ポテンシャルが55 eV以上の高エネルギー線が含まれること スペクトル型はG型以下の低温であり、それが示されない場合は、電離ポテンシャルが100 eV以上の輝線が含まれること といった基準が挙げられた。 その後、新たな知見を得て共生星の定義は整理され、 晩期型巨星の吸収成分、具体的にはTiO、水、一酸化炭素、シアン(CN)、酸化バナジウム(VO)吸収帯や、カルシウム原子・イオン(Ca I・Ca II)、鉄原子(Fe I)、ナトリウム原子(Na I)吸収線など、があること 水素原子(H I)、ヘリウム原子(He I)の強い輝線に加え、次のいずれかがあること電離ポテンシャルが35 eV以上のイオンの輝線(静穏期) AないしF型の連続光とH I、He I、1階電離金属の吸収線(爆発時) (TiO吸収帯などの)低温度星成分がみられない場合、波長6,825Åの輝線があること とまとめられている。 共生星であることがわかった天体の数は180を超え、2000年に出版された共生星のカタログでは、188の共生星と30の共生星候補が掲載されている。
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