安定したハビタブルゾーン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/15 13:37 UTC 版)
「惑星の居住可能性」の記事における「安定したハビタブルゾーン」の解説
詳細は「ハビタブルゾーン」を参照 ハビタブルゾーン (HZ) とは、惑星がその表面に液体の水を持つ、恒星の周囲の理論上の空間である。液体の水は地球の全ての生態系にとり不可欠だとみなされており、エネルギー源の次に、生命の最も重要な要素だと考えられている。ただ、これは水に依存する種にたいする偏見であるかもしれず、もし水を必要としない生命が存在し得る(例えば、代わりに液体のアンモニアを利用できる)ことが発見されれば、HZの考えは大幅に拡張されるか、制限したり全て捨てさらなければならなくなるかもしれない。 "安定した"HZとは2つの条件を意味する。 一つ目に、HZの範囲が長期にわたって変わらないこと。全ての恒星は年をとるごとに光度を増し、HZも自然に外側に移動していくが、これがもし急激に起こる(例えば、大質量の恒星)場合、惑星はHZの中に短い間だけしか居られないかもしれず、生命の誕生する機会もそれ相応に少なくなるかもしれない。HZの範囲と長期間の移動を計算するのは、炭素循環のような負のフィードバックループが光度の増加を打ち消す傾向もあることから、簡単なことではない。大気の状態と地質学により作られた仮説は、恒星の進化によるHZの範囲の推定に大きな影響を持っている。例えば、これまで提案されてきた太陽のHZの値は、説によりそれぞれ大きく異なっている。 二つ目に、地球型惑星の形成を妨げる木星のような巨大惑星が、HZに近い領域に存在しないこと。例えば小惑星帯の物質は、木星の軌道との共鳴により、惑星を形成することができなかったためのように見える。もし巨大惑星が今の金星と火星の間の軌道に存在していたら、地球は当然今のような形に育たなかっただろう。ただしこの条件は、HZの巨大ガス惑星は適切な条件にあれば居住可能な衛星を持つかもしれない、という提案によりいくらか改善される。 かつては太陽系の構造から、内側は地球型の岩石惑星、外側は木星型や天王星型の巨大惑星というパターンが他の恒星でも標準だろうと考えられていたが、ケプラー宇宙望遠鏡以前(2009年以前)の太陽系外惑星の研究によりこの考えは不適切であることがわかった。すなわち、太陽系型の惑星系は宇宙の標準ではなくその一形態であり、他に多くのパターンが存在する。多数の巨大惑星が、主にHZの可能性を妨げる中心の恒星に近い軌道で発見された。ただ、現在提示されている太陽系外惑星の情報は、識別がはるかに容易な、恒星に近い、あるいは離心率の高い(楕円の)軌道を持つ巨大惑星に偏っているとみられ、どの種類の恒星系が標準であるのかはまだ判っていない。太陽系型の惑星系は検出が技術的に困難であるため、存在しても発見されにくい。しかし、ケプラー宇宙望遠鏡による研究では、少数見つかっている。今後の技術革新により、発見数の増大が期待される。これまで発見された系外惑星の中には、非常に恒星に近い軌道を回っているため、HZに大きな影響を与えないと考えられているものもある。このようなケースでは巨大惑星の外側を居住可能な地球型惑星が周回するという、太陽系とは全く逆の形態の惑星系が存在するかもしれない。
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