大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 07:53 UTC 版)
「うつ病」の記事における「大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)」の解説
詳細は「en:Major depressive episode」を参照 大うつ病エピソードは、2週間以上の重症の抑うつ気分の存在を特徴とする。もし躁病や軽躁病のエピソードが存在すれば、診断は代わりに双極性障害となる。 大うつ病エピソードの確定には、「気分の落ち込み」と「興味・喜びの喪失」の2つの主要な症状のうちどちらかが必要である。「気分の落ち込み」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。またこれは大うつ病エピソードの診断基準Aの片方であり、もう片方は5つ以上の症状の存在である。 抑うつ気分 患者は抑うつを訴えたり、周囲から見て抑うつ状態にある。ほとんど1日中、ほとんど毎日である。 興味・喜びの喪失 最近のほぼすべての活動において、興味や喜びを喪失している(患者本人や周囲の訴えによる) 。ほとんど1日中、ほとんど毎日の著しい減退である。 食事や体重の変化 食事制限を行っていないにもかかわらず体重が著しく増減する(月に5パーセント以上程度)、または最近の食欲が著しく増大または減衰している。ほとんど毎日である。 睡眠 最近の睡眠が著しく過眠、もしくは不眠となる 。ほとんど毎日。 活動状態 周囲から見て、患者の最近の活動状態には不安を感じたり、のろくなったように思われる。ほとんど毎日。 疲労感 最近、著しく疲労感を感じる。ほとんど毎日。 罪悪感 最近、患者は根拠のない心配や不適切な罪悪感を感じており、それらは単に抑うつであり、非現実的である。ほとんど毎日。 「どうせ自分なんか価値のない存在だ」と考えるようになるなど、自尊心が低下する。 集中力 患者本人や周囲の人によれば、最近の日常活動において意思決定がおっくうであり、集中力を欠いている。ほとんど毎日。 自殺念慮・希死念慮 患者は、希死念慮(死へのおそれとは異なる)、自殺(もしくは自殺計画)、自殺未遂を訴えている。 — 大うつ病エピソード DSM-IVでは大うつ病エピソードの診断基準Eが死別反応ではないことを要求している。 DSM-5においては、死別反応といった強いストレスに伴う抑うつは、治療なく回復する可能性があるため、死別反応に関する注釈が加えられた。DSM-5では「精神障害の定義」において、よくあるストレスや喪失による、愛する人との死別といった、予測可能な反応は精神障害ではないとされ、診断基準の注釈においては、死別や経済破綻、災害や重篤な病気などへの反応は、理解可能な、正常な反応である場合もあることが記述され、また死別による抑うつ症状も1-2年続くことがあるため、以前のDSM-IVによる2か月以上続いていればうつ病の可能性があるという基準をなくした。以前のDSM-IV-TRでは、症状が死別によるものである場合はうつ病から除外しているが、しかしその気分が長期化し大うつ病エピソードに特徴付けられる要素がある場合は、死別を原因として抑うつエピソードに入る可能性があるとされていた。 DSM-IVの特定不能のうつ病性障害の項には、抑うつ性の特徴を伴うものが紹介され、関連する診断に、気分変調症(慢性的だが軽度の気分変調が長く持続する)、抑うつを伴う適応障害(特定可能な出来事やストレッサーによって落ち込みが起きている)があり除外する必要がある。それ以外の場合に特定不能のうつ病性障害が考慮され、大うつ病エピソードが身体疾患や薬物あるいは原因がないのか判別できない場合にこの診断名を用いたり、また共に研究用診断基準案である小うつ病性障害(英語版)(大うつ病エピソードの症状の幾つかのみが存在する) と反復性短期うつ病性障害(英語: recurrent brief depression)(12か月にわたり毎月起きている2週間までのうつ病性のエピソード)が、紹介されている。
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