土性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 21:33 UTC 版)
土壌の鉱物粒子は砂とシルトと粘土があり、その割合によって土性が決まる。土性に影響を受ける土壌の性質には、間隙率、透水性、浸透、膨潤度 (en)、圃場容水量、そして侵食に対する強さがある。USDA(アメリカ合衆国農務省)の三角座標による土性区分で示されているように、砂、シルト、粘土のいずれかが主成分となっていない(つまり、程良く混ざっている)ような土壌はロームと呼ばれる。純粋な砂、シルト、粘土も土壌ではあるが、伝統的な農業の観点からは、いくらかの有機物があるローム土壌が「理想的である」とされ、農業による長期的な作物の収穫によって奪われた栄養分を補給するために、肥料や堆肥が使われる。ローム土の鉱物組成は、たとえば質量比が砂40%、シルト40%、粘土20%である。土性は土の性質、特に栄養分を保持する性質(たとえば陽イオン交換容量) と水移動に関する性質に影響を与える。 砂とシルトは母岩の物理的および化学的な侵食によって形成され、粘土は母岩が降雨に溶解して生成された二次鉱物であることが多く、雲母の風化によるものもある。土粒子の比表面積と土粒子表面イオンの電荷は土壌肥沃度にとって重要なはたらきを持ち、陽イオン交換容量として測定される。砂は比表面積が最も小さく陽イオン交換容量が小さい。シルトはその次に小さく、粘土が最も陽イオン交換容量が大きい。土壌にとって砂の最も大きな役割は、締め固めに対する耐久力が大きく、土壌の間隙率を大きくしていることである。ただし、この性質は純粋な砂に対するものであり、砂がより小さな鉱物と混ざることにより、砂の粒子の間に小さな鉱物が入るため間隙率が小さくなる。シルトは鉱物的には砂と似ているが比表面積が大きいため物理化学的な反応性は大きい。粘土は比表面積が極めて大きく大量の負電荷を持っているため、土壌の水と養分の保持能力の高さを決めているのは粘土の量である。粘土質土壌は風と水による土壌侵食に耐える力がシルト質土壌や砂質土壌と比べて大きい。それは、粘土は粒子と粒子の間を結びつける力が大きいことと、有機物による侵食緩和効果によるものである。 砂は土壌鉱物の中で最も安定している。岩の破片と一次石英粒子によって構成され、直径 0.05 から 2.0 mm である(USDAの粒径区分)。シルトは直径 0.002 から 0.05 mm である。粘土は直径が 0.002 mm 以下で厚さは 1 nm (10−9 m) ととても小さいため、光学顕微鏡で観察することができない。中程度の土性の土壌では、粘土は水によって下方に溶脱 (en) して、下層に集積 (en) する。土壌鉱物組成の大きさと鉱物の性質の間には明確な相関はない。砂とシルトの粒子が石灰質であることも石英質であることもあり、粘土の粒子 (0.002 mm) が細かい石英であることも多層の二次鉱物であることもある。ある一定の粒径組成に属する土壌鉱物は、比表面積(それに関連する保水性)のような共通の性質を持っているものの、陽イオン交換容量のような化学組成に関係する性質は共通ではない。 直径 2.0 mm よりも大きな土壌の成分は岩あるいは礫(れき)と分類される。土壌を土性によって分類するために粒径の組成を決定する時には除外されるが、名称に含めることもできる。たとえば、砂質ローム土が20%の礫を含めば、礫砂質ローム土と呼ぶことができる。 土壌有機物の量が非常に多い時には、その土壌は鉱物土壌ではなく有機質土壌であるとされる。有機質土壌の条件は次のようなものである。 鉱物成分の 0% が粘土で有機物が 20% 以上 鉱物成分の 0% から 50% が粘土で有機物が 20% から 30% 鉱物成分の 50% 以上が粘土で有機物が 30% 以上
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