土器の素材
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 08:36 UTC 版)
土器の材料は、水や風によって運ばれた土の細粒が堆積してできる二次粘土を用いる場合が多く、ケイ石を主体とする母岩が風化してその場で土と化した一次粘土を使用する例は少ない。一般的には、一次粘土よりも二次粘土の方が粘性が強く可塑性に富んでいる。粘土は、砂漠やサンゴ礁が広がる一帯などを除くと世界中のどこででも採取可能であり、その可塑性の高さとともに土器に地方差・地域性を生じる要因の一つとなっている。 素地を作るにあたっては、主として粘性をいく分弱めて作業しやすくするなどのために、各種の混和剤を加えることが多い。砂粒や滑石・雲母などといった岩石の細粒、黒鉛、粉砕した土器片といった無機物のほか、草木の根などといった植物繊維や羽毛など有機質のものが混ぜられることもあり、地域により、また年代により、実に多様な混和剤が用いられる。一方、粘り気の少ない粘土の粘性を向上させるために、動物の糞や樹液、血液などを混和させる場合もある。 こうした混和剤は、以上のような理由のほか土器の軽量化や耐熱化、割れ防止、焼成の際のゆがみ防止、あるいは美観のためにも使用されるが、一般には器の質を粗くすることが多い。たとえば、植物繊維を混和させた土器(繊維土器)は成形作業がしやすく、焼成の際に繊維の一部も焼失してしまうので、器は軽量化して運搬などは容易になるが、多孔性はむしろ高まることが多い。砂もまた、多すぎると割れの原因になってしまう。 したがって他方では精製のための工夫もなされる。たとえば、粘土を乾燥させて粉末にし、水洗いして異物を取り除く作業をおこなうことがある。あるいはまた、粘土に水を大量に加えてかき混ぜ、重い砂粒を沈殿させて上の泥水を別の容器に移し、その水分を蒸発させることによって緻密で良質な粘土を得ることができる。こうした作業を「水簸」と呼んでおり、高級陶器や磁器の素地づくりでは今日でも重要な工程の一つととなっている。 また、タイプの異なる粘土をブレンドして素地として好適なものをめざすこともなされている。こうした工夫から、カオリンの多い粘土、すなわち陶土が求められるようになっていったと考えられる。
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