商業捕鯨モラトリアムとサンクチュアリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 09:09 UTC 版)
「国際捕鯨委員会」の記事における「商業捕鯨モラトリアムとサンクチュアリ」の解説
新管理方式 (NMP) で十分な科学的根拠に基いた資源管理ができない以上、より保護主義的な管理をすべきであると主張する科学者も多く現れるようになった。こうして保護的方策としてモラトリアムを採用すべきであるとの科学者からの訴えを受け、1979年の科学委員会では、NMPの妥当性が検討されたものの、合意は得られなかった。こうして捕獲枠の算出不能なNMPの失敗は、決定的となった。 こうした趨勢を受けて国際捕鯨委員会は、1982年に付表10 (e) の追加により、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決議した。この付表修正により、母船式捕鯨について1985/86年期から、沿岸捕鯨については1986年から、商業捕獲枠はすべて0頭と設定されるとともに、当該規定は最良の科学的助言のもとでの再評価が行われ、1990年までに当該措置の資源量への影響の包括的評価を行い、付表再修正と新たな捕獲枠設定を検討することが規定された(付表)。しかしIWCは1990年以降、毎年検討を行ったものの、商業捕鯨再開について合意を得ることができなかった。 新たな捕獲枠設定に関連しては、1994年に、条約5条1項 (c) にもとづき南極海をサンクチュアリ(捕獲対象外の保護区域)とする付表7 (b) の追加を決定している。日本は同修正が、根拠となる条約5条1項について条件を定めた同条2項の諸規定に違反した非合法なものであるとして異議申立を行っている。また、この後ラテンアメリカ諸国は南大西洋を、オーストラリア並びにニュージーランド等は南太平洋についてサンクチュアリ設定を求めてきた経緯があるが、いずれも4分の3の多数を得られず、採択されていない。 1982年のモラトリアム決議に対しては、当初日本、ノルウェー、ペルー及びソ連が、その法的拘束力を免れるため異議申立(条約5条3項)を行った。しかし、日本とペルーはその後に異議を撤回している。異議を維持しているノルウェーは、現在も独自に捕獲枠を設定して商業捕鯨を行っている。また、アイスランドは、2002年の条約再加入に際し、異議申立ないし留保付きの加入をしたとしている。 なお、この1982年の付表修正以前に、1979年には付表10 (d) の追加により、ミンククジラを除く全てのヒゲクジラ、マッコウクジラ及びシャチを対象に、母船式捕鯨についてモラトリアムが採択されている。このほかIWC以外の場ではあるが、1972年に開かれた国際連合人間環境会議でも、10年間の商業捕鯨モラトリアムが決議されていた。ただし、同年にIWCでも行われた提案は否決されている。
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