品質管理問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 23:31 UTC 版)
2019年、KLMオランダ航空がサウスカロライナ州ノースチャールストンのサウスカロライナ工場で製造された787-10型機の品質が「受入基準を下回っている」として苦情を申し立てていることが報じられた。KLMオランダ航空によると、座席の固定が甘かったり、固定ピンが欠品または適切に取り付けられていない、ナットやボルトの締付が不完全、燃料配管のクランプが固定されていないなどの問題が見つかったという。 これ以前にも、作業者の習熟不足により機体の安全性に懸念が持たれていた。 2020年8月末には、サウスカロライナ工場での不適切な胴体部シム張り作業や内側外板仕上げ作業が発覚したためユナイテッド航空、エアカナダ、全日本空輸、シンガポール航空、エア・ヨーロッパ、ノルウェー・エアシャトル、エティハド航空の各社が運航する787 計8機が地上待機となった。 これらの欠陥は、限界荷重において材料の早期疲労や構造欠陥を発生させる可能性がある。ボーイングは2019年8月に欠陥のあるシムを特定していたが、それを使用した機体が地上待機になったのは、ニューヨーク・タイムズがサウスカロライナ工場での787の品質管理問題を報道してから1年も経った後のことであった。 2020年9月7日には、ウォール・ストリート・ジャーナルがFAAにより2011年の787型機投入時点に遡ってボーイングの品質管理不備に関する調査が行われていると報じた。ボーイングは、FAAに対して787の後部胴体に製造基準を満たさない「不適合」部位があることを申告し、FAAは上級者レビューにおいて2011年以降に納入された約1,000機のうち約900機に追加検査を要求することを検討していていた。ボーイングはかつて品質マネジメントシステムにより900人の品質検査員を削減しても問題になることはないと主張していたが、実際にはその品質マネジメントシステムでシムや外板の瑕疵を見抜くことができていなかったことから、FAAの審問に付されることとなった。 2020年9月8日には、ボーイングは水平安定板にも品質管理上の問題があり、893機に影響があると発表した。ソルトレイクシティでの尾部組立作業において締付強度を強くしすぎたため材料の疲労が早まる可能性があるというもので、ボーイングは最近の品質管理問題によって短期的には機体引き渡しのペースが鈍化する見通しで、運航中の機体についても修理を行うことを検討していると発表した。 2020年9月10日にはロイターがシアトルのラジオ局KOMOの報道を引用して、ボーイングの技術者は6ヶ月前から787の垂直尾翼に段差があり、数百機に影響すると申し立てていると報じた。サウスカロライナ工場およびエバレット工場において、ファスナの最終取付工程の前にシムが不適切に取り外されており、限界荷重条件における構造欠陥を招く恐れがあった。FAAとの協議は保留されているが、ボーイングとしては定期整備中に一度、問題の有無を確認するための追加検査を行うことになると想定しているという。 2021年1月時点で、ボーイングは一連の品質管理問題に関連する検査を完了させるため、機体引き渡しを停止していた。同年3月にFAAは787の新造機4機の検査・承認にかかるボーイングの組織認証許可(英語版)を取り下げるとともに、必要であればこの措置を他機種にも拡大すると表明した。結局、ボーイングは同年3月26日のユナイテッド航空向け787-9から引き渡しを再開した。 2021年7月13日には前部圧力隔壁に段差が見つかったことを受けて生産ペースが落とされた。同社はこの問題が就航中の787に影響するか調査すると表明したが、その確認のための検査プロセスに疑念を持たれることとなった。FAAは、この問題は「直ちに飛行安全に影響するものではない」とし、ボーイングもFAAと共働して問題の解決にあたり、就航中の機体を地上待機とする必要はないとした。 2021年9月4日には、FAAがボーイングの「機体全てを確認するのではなく、範囲を絞って迅速に検査を行うことで機体引き渡しを加速する」という提案を、少なくとも同年10月末までは却下したと報じた。 2021年10月14日には、ボーイングがチタン製の床梁固定用金具などについて、過去3年間に渡って不適切に製造されていたと発表した。レオナルド経由でイタリアのMPS社から購入していたもので、同社はFAAに報告するとともに、安全性に直ちに影響する物ではなく、欠陥部品が使用されている機体を調査しているという。
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