かがくきそう‐じょうちゃくほう〔クワガクキサウジヨウチヤクハフ〕【化学気相蒸着法】
読み方:かがくきそうじょうちゃくほう
化学気相成長
(化学気相蒸着法 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/07 06:39 UTC 版)
化学気相成長(かがくきそうせいちょう)、化学気相蒸着(かがくきそうじょうちゃく)または化学蒸着(CVD: chemical vapor deposition)は、さまざまな物質の薄膜を形成する蒸着法のひとつで、石英などで出来た反応管内で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。常圧(大気圧)や加圧した状態での運転が可能な他、化学反応を活性化させる目的で、反応管内を減圧しプラズマなどを発生させる場合もある。切削工具の表面処理や半導体素子の製造工程において一般的に使用される。
特徴
- 高真空を必要としないため、製膜速度や処理面積に比して装置規模が大きくなりにくいメリットがある。
- 製膜速度が速く、処理面積も大きくできる。このため大量生産に向く。
- PVD、MBEなどの真空蒸着と比較すると、凹凸のある表面でも満遍なく製膜できる。
- 基板表面と供給する気相の化学種を選ぶことで、基板表面の特定の部位にだけ選択的に成長することが可能である。
分類
供給する化学種や求める特性などによって、様々なバリエーションが存在する[1]。最も基本的なのは、化学反応の制御に熱を用いる熱CVDである。
- 熱CVD - 熱による分解反応や化学反応を利用する方式。
- 光CVD
- プラズマCVD - プラズマを用いて原料ガスの原子や分子を励起・反応させる方式。
- エピタキシャルCVD
- 原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition) - 膜材料を原子層レベルで一層ずつ堆積させる方式。
- 有機金属気相成長法(MOCVD) - 原料に有機金属を用いるもの。
脚注
- ^ 図解・薄膜技術、真下正夫、畑朋延、小島勇夫、培風館、1999年、ISBN 4-563-03541-6
- ^ Schropp, R.E.I.; B. Stannowski, A.M. Brockhoff, P.A.T.T. van Veenendaal and J.K. Rath. “Hot wire CVD of heterogeneous and polycrystalline silicon semiconducting thin films for application in thin film transistors and solar cells” (PDF). Materials Physics and Mechanics. pp. 73–82
関連項目
化学気相蒸着法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:42 UTC 版)
炭化水素の混合気体による化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)を用いるもの。1980年代初頭、この方法は世界中の科学機関により研究対象にされ、容易で順応性の高いCVD装置は研究機関の間では人気がある。利点としては、様々な種類の基板上で広範囲にダイヤを成長させることができる点と、化学的な不純物の種類と量を細かく制御でき、それにより特性を自由に変化させたダイヤモンドの合成が可能な点である。大量生産には、前節の高温高圧法がより適しているが、高圧力環境を必要とせず、一般的に27kPa未満でダイヤモンドの成長が行われる。 CVD法では、合成基板の前処理と、チャンバー内の混合気体の種類とその比率が重要である。まず基板は、合成に適した材料とその結晶方位を選択しなければならない。基板の合成面をダイヤモンド粉末で傷付け処理を施し、ダイヤモンド成長に最適な基板表面温度(約800℃)を設定する。次に、合成ガスはメタンなどの炭素を含む気体と水素(メタンと水素の割合は1対99)を必要とする。非ダイヤモンド炭素をエッチングにより選択的に除去するため、水素は不可欠である。そして混合ガスはマイクロ波、熱フィラメント、アーク放電、電子ビームなどの方法で化学的に活性なラジカルへ励起させる。 注意点としては、プラズマ状態の気体によりチャンバー内の物質がエッチングされ、成長中のダイヤモンド内に取り込まれる点で、とくに気相合成ダイヤモンドには、装置に取り付けている透明の石英窓由来のケイ素が不純物として混入することがある。防止するには石英窓のない装置で合成するか、窓から基板を遠ざければよい。また、チャンバー内に非常に低濃度であってもホウ素を含む物質が存在すると、純粋なダイヤモンド合成には適さない。
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