かがくきそう‐せいちょうほう〔クワガクキサウセイチヤウハフ〕【化学気相成長法】
化学気相成長法
【英】Chemical Vapor Deposition, CVD
化学気相成長法とは、半導体集積回路(IC)を製造する工程のうち、化学反応を利用して基板をシリコンの薄膜でコーティングする手法のことである。ICや太陽電池の基板を製造する上では重要な工程のひとつである。
化学気相成長法では、シリコンの電子を化学的に不安定に(ラジカル化)させることで、電子の安定化反応を促進し、安定化の結果として基板に吸着され堆積する方法がとられる。電子のラジカル化にはさまざまな手法があり、シリコンをガスの中に含ませて熱や光のエネルギーを加えたり、高周波によってプラズマ化したりする。このうち、熱量によって原料を堆積させる手法は「熱CVD」と呼ばれ、光エネルギーを用いるものが「光CVD」、またガスをプラズマに変容させるものは「プラズマCVD」と呼ばれる。(プラズマCVDは基板そのものが損傷を受けやすいので扱いが難しいとされる)。
化学気相成長法によって形成される物質には、主にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、アモルファスシリコン薄膜などが用いられる。
化学反応によって薄膜を形成する化学気相成長法に対して、原料物質に物理的な作用を加えて薄膜を堆積させる手法が、物理気相成長法(Physical vapor deposition,PVD)と呼ばれる。物理的作用としては、直接に衝撃を加えるなどの方法がある。物理気相成長法は、基板上のトランジスタのような立体構造を形成する際に用いられる。
化学気相成長
(化学気相成長法 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/07 06:39 UTC 版)
化学気相成長(かがくきそうせいちょう)、化学気相蒸着(かがくきそうじょうちゃく)または化学蒸着(CVD: chemical vapor deposition)は、さまざまな物質の薄膜を形成する蒸着法のひとつで、石英などで出来た反応管内で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。常圧(大気圧)や加圧した状態での運転が可能な他、化学反応を活性化させる目的で、反応管内を減圧しプラズマなどを発生させる場合もある。切削工具の表面処理や半導体素子の製造工程において一般的に使用される。
特徴
- 高真空を必要としないため、製膜速度や処理面積に比して装置規模が大きくなりにくいメリットがある。
- 製膜速度が速く、処理面積も大きくできる。このため大量生産に向く。
- PVD、MBEなどの真空蒸着と比較すると、凹凸のある表面でも満遍なく製膜できる。
- 基板表面と供給する気相の化学種を選ぶことで、基板表面の特定の部位にだけ選択的に成長することが可能である。
分類
供給する化学種や求める特性などによって、様々なバリエーションが存在する[1]。最も基本的なのは、化学反応の制御に熱を用いる熱CVDである。
- 熱CVD - 熱による分解反応や化学反応を利用する方式。
- 光CVD
- プラズマCVD - プラズマを用いて原料ガスの原子や分子を励起・反応させる方式。
- エピタキシャルCVD
- 原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition) - 膜材料を原子層レベルで一層ずつ堆積させる方式。
- 有機金属気相成長法(MOCVD) - 原料に有機金属を用いるもの。
脚注
- ^ 図解・薄膜技術、真下正夫、畑朋延、小島勇夫、培風館、1999年、ISBN 4-563-03541-6
- ^ Schropp, R.E.I.; B. Stannowski, A.M. Brockhoff, P.A.T.T. van Veenendaal and J.K. Rath. “Hot wire CVD of heterogeneous and polycrystalline silicon semiconducting thin films for application in thin film transistors and solar cells” (PDF). Materials Physics and Mechanics. pp. 73–82
関連項目
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