労働者の政治闘争と国際連帯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:05 UTC 版)
「第一インターナショナル創立宣言」の記事における「労働者の政治闘争と国際連帯」の解説
過去における労働者による闘争のなかで重要なものはチャーティスト運動であり、社会経済的には1847年の工場法(英語版)による十時間労働制の獲得であるとマルクスは指摘している。チャーティスト達は、自由主義の盲目的な経済法則に代えて生産は社会的見通しおよび人間的配慮に支配されるべきだということを三十年の長きにわたって力説してきた。それ故に十時間労働法は、一つの偉大なる実用的な施策であるばかりでなく、一つの主義の勝利であり、中産階級の経済学(古典派経済学)が初めて白日の下で労働者階級の経済学(マルクス経済学)に屈服したということを示していると言える。 また、ロバート・オウエンやカベ主義者の試みやプルードン的な社会主義が強く主張する協同組合的生産の構想(これらは空想的社会主義に位置付けられる思想である)、あるいは、個々の労働者による気紛れな努力(自助による自力救済や素朴単純な労働組合主義、自由・労働主義(英語版))という局地的な成果では、資本の力を圧倒することはできないし、労働者階級の窮状の根治にはつながらない。それゆえ、マルクスは次のように言う。 「勤労大衆を救うためには、協同労働を全国的な規模で発展させる必要があり、したがって、国民の資金でそれを助成しなければならない。しかし、土地の貴族と資本の貴族は、彼らの経済的独占を守り永久化させるために、彼らの政治的特権を利用することを常とする。今後も彼らは、労働の解放を促すことはおろか、労働の解放の道にあらゆる障害を横たえることをやめないであろう。……、したがって、政治権力を獲得することが、労働者階級の偉大な義務となった。……。 このとき、労働者階級は成功の一要素、すなわち「数」を有していた。しかし、「数」は団結にもとづいて結合してそして知識によって指導されるときにのみ、国民的勢力の中で重きをなしうるのである。さまざまな国の労働者は兄弟の絆で結ばれ、この絆に励まされて、彼らのあらゆる解放闘争でしっかりと支持しあわなければならない……。 1864年9月28日、セント・マーティンズ・ホールの公開集会に集まった諸国の労働者は、この思想に促されて、ここに国際協会を設立した。」 そう、マルクスが述べるように、かつてのチャーティスト運動と同様に労働者は団結によって再び政治勢力を成していき、やがては政治権力を制圧して、国家機構を自らの利害の増進のために実際に利用できるようにすることが労働者階級の重大な義務となっていくのだ。著名なマルクス史家マックス・ベアは、こうした新時代の理念のもとに諸勢力結集の必然的契機が生じたのだと、マルクスの『宣言』を読み取った。
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