労働者の解除権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/17 07:52 UTC 版)
使用者から明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる(第15条2項)。いわゆる会社が労働者に予告なしに行う「懲戒解雇」に対する、労働者が会社に予告なしに退職できる「懲戒退職」のことである。なお、第15条1項は労働者が自己の労働条件の具体的内容を承知せずして雇い入れられることのないよう使用者に労働条件の明示を義務付けたものであるから、他の労働者の労働条件が事実と相違していたとしても即時解除はできない(昭和23年11月27日基収3514号)。 労働契約締結にあたり社宅を供与すべき旨契約したにもかかわらずこれを供与しなかった場合、社宅を利用する利益が第11条でいう「賃金」である場合は、社宅を供与すべき旨の条件は第15条1項の「賃金、労働時間その他の労働条件」であるから、これを供与しなかった場合は第15条2項の規定が適用される。社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合は、社宅を供与すべき旨の条件は第15条1項の「労働条件」には含まれないから、これを供与しなかった場合でも第15条2項の規定が適用はない。なお第15条の規定がない場合においても、民法第541条の規定によって契約を解除することはできる(昭和23年11月27日基収3514号)。 この場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない(3項)。 この「旅費」には、住居変更前までの旅費にとどまらず、親族の保護を受ける場合にはその者の住所までの実費を含み、また就業のために移転した家族(労働者により生計を維持されている同居の親族をいう(昭和23年7月20日基収2483号))の旅費も含まれる(昭和22年9月13日発基17号)。 また、この場合における離職は、雇用保険における基本手当の受給において「特定受給資格者」(倒産・解雇等により離職した者)として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる(雇用保険法第23条、雇用保険法施行規則第36条2号)。
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