初期の作風
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 01:37 UTC 版)
大友の作品が一般的に知られるようになるのは初作品集『ショートピース』が刊行され「ニューウェーブ」作家とも交流を持つようになる1979年頃であるが、76年-78年頃にはすでに作風を確立し一部の漫画読者からは知られた存在になっていた。大友の初期の作品はアメリカン・ニューシネマの影響が強く、ロックやジャズ、ドラッグといった70年代の文化を背景とした日常風景を淡々と描くものが多かった。コマ割りなどに大友が敬愛する黒澤明やサム・ペキンパーの影響が強い。また緻密に描き込まれているにも関わらず、余白を大胆に取ることで白っぽい画面が作られており、リアルでありながら劇画のような泥臭さや過剰さのない乾いた画風が注目された。さらに初期の大友作品の大きな特徴は、日本人のキャラクターをまったく美化せずに、見たままアジア人的な容姿(細い目、低い鼻、短い足、小さい乳房)で描いたことであり、これは男はかっこよく、女はかわいらしく描くのが当然とされていた漫画界において異例のことであった。このような大友のスタイルの新鮮さは漫画志望者や既成の漫画家に大きな影響を与え、『ショートピース』刊行前後より模倣者が数多く出現、その影響は吉田秋生などの少女漫画家にも及んだ。また、大友はフランスのバンド・デシネ作家メビウス(ジャン・ジロー)の影響を受けた作家として言及されることも多く、欧米では「日本のメビウス」という呼び方をされることがある。 前述のように、大友は当初は70年的な文化を背景とする物語を主に描いていたが、1979年の52ページの未完の作品「Fire-Ball」(『彼女の想いで‥‥』に収録)ではサイバーパンク風のSFを描いている。この作品はそれまでロングショットだけで作中人物を描いてきた大友が初めてアップを使った作品でもあり、『童夢』『AKIRA』と続く80年代のSF作品への前触れとなった。なお、『AKIRA』以降の作品では登場キャラクターのヒーロー・ヒロイン化に伴い、初期に比べて登場人物の目が大きくなり、造形をかっこよく・可愛らしく描くようになっている。過去のインタビューでは、「そういった(一般的なアニメらしい可愛さの)絵柄も簡単に描けるが、描く理由もない。描かないと生き残れないなら描く」と語っている。
※この「初期の作風」の解説は、「大友克洋」の解説の一部です。
「初期の作風」を含む「大友克洋」の記事については、「大友克洋」の概要を参照ください。
- 初期の作風のページへのリンク