切手の状態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 17:52 UTC 版)
切手は元来郵便物に使用されることを前提に製造されるため、当然まだ使用していない「未使用」のものと、すでに消印が押され使用された「使用済」のものが存在するが、収集家のいう切手の状態とは、その切手がどの程度きれいか、つまりダメージを受けていないかを指す。 ほかの趣味と異なり、切手収集においては使用済の状態でも切手は価値を持ち、場合によっては未使用よりもはるかに高額で取引されることもある。 以下に切手の状態を示す。 まず、未使用のみに当てはまる要素として以下の点が挙げられる。 裏糊の状態MS Mint Stamp (s) の略称。単にMintともいう。Mintは、もともと貨幣収集の用語であり、切手の場合、郵便局の窓口などで発売された状態のままのものをいう。ただの未使用切手の場合、Unusedなどの語があてられる。 H Hingedの略称。ヒンジ跡ありの意。かつては収集した切手をアルバムの台紙に直接貼りつけるか、台紙と切手との間に、裏糊のついた蝶番状の薄い紙(=ヒンジ)を貼って整理するのが一般的だったため、1960年以前の切手には比較的多く見受けられる。 LH Lightly Hingedの略称。軽いヒンジ跡ありの意。上記より跡が目立たないもの、程度が軽いもの。さらに程度がいいものをVLH: Very Lightly Hinged と言う。 NH Never Hingedの略称。ヒンジ跡なしの意。ヒンジの代わりに透明フィルムで切手を包む「マウント」が登場して以降、最近発行の未使用切手では、ヒンジ跡があるものはほとんど見かけなくなっている。古い切手でこのような状態であれば、ヒンジ跡ありよりも高値で取引されることが多い。MNH: Mint Never Hingedともいう。 OG Original Gumの略称。切手発行当初の裏糊がそのまま残っていることを指す。 続いて、未使用使用済ともに当てはまる用語を示す。 印面の状態WC Well Centeredの略称。ウェルセンター。切手の印刷面が中央に位置するように目打されている状態のこと。 OC Off Centeredの略称。オフセンター。切手の印刷面よりずれて目打されている状態のこと。 収集家にはウェルセンターの状態のものが好まれるが、極端なオフセンターの場合は逆に珍重されることもある。ただし、第二次世界大戦直後の日本切手のように、品質管理の水準が極端に低下した状態で印刷された切手は、そのような状態の切手が多数を占めるため、過度な珍重は禁物である。日本ではこのような状態の切手を「印面ずれエラー」と称することが多いが、エラーは目打漏れ(部分漏れ含む)や刷色抜け、逆刷などの切手に用いられる用語であり、正確には、フリークもしくはオッズと呼ばれるべき存在である。 表裏合わせた全体的な印象、状態Superb 完全美品の意。完全なウェルセンターで、目打またはマージンが美しく、刷色、裏糊の状態が非常によく、欠点がまったくないもの。 XF Extremely Fineの略称。極美品。完全に近いウェルセンターで目打またはマージンの状態がよく、糊落ちや色褪せなどのないほぼ完全な品。まれにEFと称されることもあるが、この表記は一般にコインの状態を示すときに使われる。 VF Very Fineの略称。美品。良好なウェルセンター。 F Fineの略称。普通品。小シミ、ヒンジ跡のあるもの。未使用切手においては、この状態ではコレクション価値は幾分低下するが、使用済切手では標準の状態。収集家の手から手に渡ったりする間に、幾分経時変化を起こした程度の状態。 VG Very Goodの略称。単にGともいう。やや劣。軽度な欠陥。目打欠けや糊落ち、ヘゲなどがある状態で、このあたりから一般の収集家が敬遠する傾向がある。 D Defectの略称。劣。強い欠陥のあるもの。クラシック切手など、貴重な切手以外はコレクション価値がほとんどない状態。切手の一部が欠落したり、補修跡があるものも含む。 多色刷の切手は相互の色のズレ具合などもその条件になり、当然ながら正しい位置に収まったものほどよりよい状態とされる。 以上より、切手の状態を示す表記例を挙げる。例:NH VF, NH F-VF, LH G-Fなど。 使用済については、消印自体も評価の対象になる。使用年代も局名も分らないものより、そのいずれか、もしくは両方がはっきりしているもののほうが価値が高いとされる。また、珍しい局の消印や、消印自体が珍しいものも珍重される。ただし、このような価値観は、日本切手の収集においてはごく最近のものであり、かつての切手ブームでは「悪消し」と呼ばれていた使用例でもある。さらに、いくら消印がはっきりしていても、記念特殊切手では、その発行時期に比べ極端に遅い使用例は敬遠される。 また、諸外国ではこのような消印に重きを置いた収集は主としてクラシック切手でなされており、消印収集(マルコフィリー)が目的でない限り、上述したようなセンターや全体のフレッシュさを重視した収集が主流である。
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