公共交通のユニバーサルデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 01:55 UTC 版)
「ユニバーサルデザイン」の記事における「公共交通のユニバーサルデザイン」の解説
ユニバーサルデザインは「可能な限り最大限に」と、今まで以上のものを求める姿勢であるが、法は最低限の要求水準を定めるもので、もともとこの二つは異なる方向性を持っている。しかしわが国の公共交通のユニバーサルデザインにおいては、2005年に国土交通省がユニバーサルデザイン政策大綱を定めたこともあって、法、特にバリアフリー法が重要な役割を果たしてきている。 公共交通は誰もが使えることが前提となり、ユニバーサルデザインであることが求められる。これには利用者のニーズを反映することはもとより、都市部への集中、地方での過疎に加えて高齢化といった社会情勢の反映も重要な要素である。これまでの公共交通は、一般に、利用者を集団として一定の方向あるいは目的地に同一方法で運ぶことにより、安価で安全で、高速な移動を提供してきた。待ち時間なくドアtoドアで移動したいというニーズは、高齢化によってますます高まっている。それは今までの公共交通では実現が難しかった。これからのユニバーサルデザインを目指す公共交通は、これまでのマスとしての移動と共に、利用者個々のニーズの実現に焦点を当てる必要がある。 地方では公共交通が衰退し、高齢になって運転できなくなったら、病院にも買い物にも行けなくなるという現実がある。これに対してデマンドバスや、タクシーの活用、近年では自動運転バスの導入など、自治体も介入してさまざまな検討がなされ、実際に運用されているところもある。都市部周辺においても、高度経済成長期に大都市周辺の丘陵地帯を開発したニュータウンで、傾斜地における高齢の人の移動をどう確保するかという課題を抱えている。 都市部では、バリアフリー法の規定もあって、ノンステップバスやUDタクシーの普及、駅のエレベーターや車いす対応トイレ、駅ホームからの転落防止柵の整備が進んでいる(国土交通省「移動等円滑化の促進に関する基本方針」)。とりわけ大都市ではラッシュ時の過密さが問題である。この密度を軽減するには、テレワーク、時差出勤といった働き方改革など、鉄道以外の変化が求められる。また情報通信技術によってさまざまな移動手段を有機的、効率的に活用するMaaSが注目されている。 近年は、複雑な駅構内の案内誘導を外国人、視覚に障害のある人、色覚少数者等にどうわかりやすくするかについても、さまざまに試行されている。また接遇係員が多様なニーズに理解を持てるようにする意識改革も進められている。 また、よりよい公共交通をめざして、利用者の声を反映させる取り組みも行われてきている。中部国際空港、羽田空港第3ターミナル、成田空港では何年もかけて利用者と専門家、空港関係者等が検討作業を重ね、それを施設に反映させる取り組みが行われ、事後評価を継続しているところもある。こうした取り組みは大規模プロジェクトならではのものだが、そこに関係した人たちが他の、基準作りや事業の場でこの経験を活用することで、わが国全体のレベルアップにつながっていくことになる。
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