健康保険療養費制度の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/21 07:41 UTC 版)
鍼灸の健康保険治療には、医師による同意書が必要とされている。厚生労働省は次のような理由で鍼灸保険の同意書撤廃を「困難」としている。 鍼灸の対象疾患は外傷性の疾患ではなく発生原因が不明確 鍼灸治療は"治療と疲労回復等"との境界が明確でない 鍼灸治療は施術の手段・方式が明確でない 鍼灸治療は成績判定基準が明確でなく客観的な治療効果の判定が困難 健康保険療養費の支給基準は過去の通達により「医師による適当な治療手段のないもの」とされるため、鍼灸を保険で受診したい患者にとって壁となっている。例えば、腰痛で医師の治療を受けつつ腰痛を保険で鍼灸師に診て貰うことはできない。 鍼灸の保険適応として神経痛・リウマチ・頸腕症候群(肩こり等)・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症(ムチウチ)の6疾患があり往療も出来るが、リウマチなどの進行性の疾患は以上の件を踏まえ鍼灸での保険診療はほぼできない状態である。 また、同意書を貰ったが「医師の治療行為が無い」ことを理由に鍼灸健康保険療養費が不支給処分とされた件もある。←現在は医師の治療は必ずしも必要ないと厚生労働省から通達されている。レセプトを審査する県国保の診療報酬審査委員会などが鍼灸に批判的見解を有している場合、審査は厳しくなる傾向がある[要出典]。 鍼灸の保険治療には医師の同意書が必要である。これは患者が鍼灸院に行き同意書用紙を受け取り、それを病院へ持っていき医師に「鍼灸院で治療を受けますので記入をお願いします」などと伝え記入してもらってから、再度、鍼灸院へ行き治療を受ける仕組みである。 加えて、受領委任払い(病院のように一部負担金のみを窓口で払う制度)を認めている保険者も多いが、償還払いしか認めない保険者も少なくない。償還払いとは窓口で一旦、全額を患者が払い、後から患者自身が保険者へ請求する制度であるが、療養費の算定方法を知らない一般人が少しでも誤記があれば返送される療養費支給申請書を入手し正しく記入し送付することはハードルが高い[要出典]。そのためこの償還払いを鍼灸師に委任することができる。 また、鍼灸院での施術1回あたりの保険算定額は1500円程度であり1時間かけて治療を行っても算定額は変わらない。この額に関しては接骨院における3回目以降と大体同じ額であり、接骨院の経営手法と同様に、保険のみで行う治療の場合は短時間。時間が長くなるときは、単にサービス、または自費を加算することが一般的である。 上記の複数の状況により、保険治療を行うことが鍼灸院や患者にとって利益とならないケースも多い。例えば、1時間程度で5千円の自費をメインに行っている鍼灸院の場合、保険のみで行うとなると治療時間が15分程度になってしまうため頻繁に通うなどが必要になる。また治療内容が異なることも多い。保険と自費を合わせると保険1560円(一部負担金3割として450円)+自費3500円で1時間程度で5000円のいつもと同じ治療を受けることができ患者にとってはメリットはあるが、鍼灸院側が保険を扱うための費用(レセコン使用料、消耗品 請求団体への会費と手数料 取り扱いセミナー 必要であれば同意書発行医師への謝礼)や手間を考慮すると、保険治療が目当てで来院する患者が多くないと経営的に厳しいといえる。 前述の流れから鍼灸治療を行う鍼灸院のほとんどが自費治療を通例としてきており、これらの理由から、わが国の保険医療費に占める鍼灸療養費の割合は非常に低い(250億円前後)。長年、この様な問題があり鍼灸師関連団体が鍼灸保険治療制約の改善がなされるよう厚生労働省に定期的に協議や政治活動を行っており、近年は改善傾向にある。 よくある誤解として、鍼灸院で医師の同意書もなく保険が効いたという錯覚は、鍼灸接骨院にて柔道整復師による柔道整復術に保険が適応されている可能性がある。
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