作業員の賠償請求
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 15:27 UTC 版)
「チューレ空軍基地米軍機墜落事故」の記事における「作業員の賠償請求」の解説
除去作業に関わったデンマークの作業員は被曝により長期にわたる健康障害が発生していると主張した。彼らはキャンプ・ハンジカーで作業していたのではなかったが、汚染された氷が集積されたタンク・ファームや汚染された残骸が船積みされた港で作業し、除去作業で使われた車両の修理を行っていた。また、現地の大気から被曝した可能性もあった。多くの作業員は、プロジェクト・クレステッドアイスの健康問題が報告された後の数年間検査を受けた。1995年の調査では、1,500名のサンプルのうち410名が癌で死亡していた。 1986年、デンマーク首相ポウル・スリュタは、生存している作業員の放射線検査を委託した。デンマーク臨床疫学研究所は11か月後、プロジェクト・クレステッドアイスの作業員の癌発症率は、プロジェクト以前および以後に基地を訪れた作業員に比べ40%高いと言う結論を出した。また、作業員の癌罹患率が、一般の人に比べ50%高いことも明らかにしたが、被曝が原因とはしなかった。 1987年、ほぼ200名の除去作業員がアメリカを相手取り訴訟を起こした。この訴訟は成功しなかったが、結果的に数百の機密文書が公開されることとなった。それら文書によって、デンマークの作業員よりも多く被曝していると思われるアメリカ空軍の除去作業に関与した人々が、その後の健康問題について調査されていないことが明らかにされた。アメリカはそれ以降それら作業員に対し定期検診を実施した。1997年、デンマーク政府は1,700名の作業員に対し、一人当たり50,000デンマーク・クローネ(2009年時点で60,000クローネ相当)の賠償金を支払った。 2000年にデンマーク政府に対して調査を開始するよう欧州司法裁判所命令が下され、さらに2007年5月に欧州議会が同様の命令を決議をしたにもかかわらず、デンマーク作業員の健康は定期的に検査されることはなかった。2008年にチューレ元作業員協会は欧州司法裁判所に提訴した。原告は、デンマーク政府が先の判決への対応を怠ったことが、彼らの病気の発見の遅れにつながり、予後の悪化を招いたと主張した。デンマークは1973年に欧州原子力共同体に加盟しており、従って1968年の事案についてヨーロッパの条約に束縛されず、「事故が発生したときデンマークは加盟国ではなく、従ってその時点での共同体法に束縛されると考えることはできない。デンマークの作業員と事故の影響を受けたと思われる人民に対する義務は、国内法からのみ生じる」とされた。 デンマーク政府は、事故と長期にわたる健康問題との関係を否定した。デンマーク国立放射線防護研究所のカール・ウルバク博士は、「私たちは癌の事故や癌の死亡率に関する非常に優れた記録を所有しており、そして徹底的に調査を行った」と語った。作業員たちは、証拠の欠如が、適切な医学モニタリングの不足に起因していると語った。2008年11月、この訴訟は不成功に終わった。
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