代替医療とエビデンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 14:10 UTC 版)
補完・代替医療に用いる薬物の科学的検証の手順などは、現代医学でのそれとは異なっていることが多い。現代医学の場合では、新奇な物質を用いようとすることが多いわけなので、まず物質を同定してから細胞実験、動物実験、人体における臨床、という順で行われるが、伝統医療の薬の場合は、すでに広く用いられているものが多く、古くからヒトで使用されており安全性が確認されているものが多いため、動物の安全性試験を通過したものは、臨床試験で本当に有用なのか判定した後に、物質の同定へと進むので、順序が異なるのである。2006年の論文には、当時、補完・代替医療の専門雑誌も数多く発刊されるようになっており、科学的なエビデンスが急速に蓄積されつつある旨が記されている。eCAMという専門誌もあり、これは日本側の研究者らの提案によって発刊され、中国医学の成果の投稿に適した国際誌であり、インターネットで無料で閲覧可能である。(Evidence-based Complementary and Alternative Medicine) 代替医療の中には、鍼灸・漢方医学(薬用植物)・推拿のように、長い歴史の中で経験的に有用性が認められてきたが、近年改めて科学的実験・調査が行われ、有意な治療効果が見込めることが確認されるようになった療法もある。鍼灸・漢方といったような代替医療にもエビデンスを主体にした考え方も出てきており、また、WHOが1996年、鍼灸における適応疾患を起草したり、1997年、NIHの鍼治療の合意形成声明書が発表され、現代医学の補完代替医療へのアプローチも進んできている。 米国政府は補完代替医療の有用性を検証研究するため、米国NIHの下部組織として国立補完代替医療センター (NCCAM) を設立した。 イギリスにおけるリフレクソロジーのように、数年にわたる実データの蓄積を含む正規の科学的な検証を経たうえで、議会の承認を経て正規の保険医療に組み込まれ成果をあげているものもある。 食事療法や健康食品のような分野は補完・代替医療の中でも研究が行われにくいために、エビデンスが少ないと報告されている。米国では、食事療法や健康食品の使用については特定の疾患では注意した上で容認するというガイドラインがある。 プラセボ以上の医療効果が無いものまでも代替医療の範囲に含めるべきかについて議論がある。とされた。サイモン・シンらが行った根拠に基づく医療(EBM)の手法を用いた調査では、「鍼灸はいくつかのタイプの痛みと吐き気には効いている」とされた。また同調査で、「カイロプラクティックは腰痛の治療にのみ有効性が認められる」「ホメオパシーはほぼプラシーボ効果である」とされた。英国カイロプラクティック協会はサイモン・シンを訴えていたが、最終的に訴訟は取り下げられた。イギリスの下院委員会も「ホメオパシーには偽薬以上の効果はない」として公的扶助の対象外(保険適用外)とすべきであると言う報告書をまとめた。
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