事実上の踏切
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 00:41 UTC 版)
鉄道事業者によって認められた踏切のほかに、小さな路地や畔道、山道などの里道やいわゆる赤道(あかみち)と鉄道線路が交差している場所がある。近隣住民が線路脇の土手を階段状にして上り下りしているケースもある。このような場所は踏切ではなく、法令上は一般人の立ち入り・横断は禁止されているが、実際には近隣の住民が日常的に横断し、事実上の踏切となっている。一部のメディアではそのような場所を勝手踏切と呼んでいる。一方で、国土交通省は「明確な定義がなく、鉄道事業者も踏切と認めていない」として「勝手踏切」という語を公的に認めていない。 2016年(平成28年)11月1日付の『読売新聞』の報道によると、日本全国にあるこうした場所が、正規に認可された踏切数(取材時点で3万3432か所)の約6割に相当する約1万9000か所にも及ぶことが、国土交通省の調べで判明したとしている。その後も国土交通省は鉄道事業者を通じて調査を継続し、沖縄都市モノレール線しかない沖縄県を除く46都道府県全ての鉄道に人が日常的に横断している形跡がある場所があった。2021年1月時点で判明分だけで1万7066か所で、2016年3月時点の約1万9000か所より減ったものの依然多い。最多は愛媛県(1031か所)で、続く長野県と新潟県も800か所を超える。 こうした事実上の踏切は、無許可での線路横断を禁じた鉄道営業法に違反し、それで運行トラブルを招けば往来危険罪(刑法)に問われる可能性もある。 このような場所の中には、元々は近隣住民が利用していた生活道路が後から建設された線路によって分断された歴史的経緯が存在する例もある。鉄道事業者側としてはあくまで線路内立ち入りを黙認しているという扱いで、線路内に立ち入らないよう注意書き看板などを設置している。往来が増加するなど鉄道事業者が危険と判断すればこれまで黙認されていた場合でも警察当局への通報ならびに検挙がなされるリスクが存在する。踏切ではないので踏み板などもないが、鉄道事業者によっては非公認を前提としつつ踏み板を設置した例がある。フェンスで線路への立ち入りを防ぐ対策もあるが、費用負担が大きいうえ、住民の反発を受けることもある。江ノ島電鉄は折衷案として、津波からの避難時など非常時に開けられる錠付き扉を設置した。 また、このような場所を正式に踏切にすることは踏切を新設することになり、鉄道技術基準省令39条に抵触する。このため、複線化などの改良工事の際に閉鎖(横断不能化)されることもある。「勝手踏切」状態だった場所への踏切新設が行われた事例自体は存在しており、氷見線における義経岩アクセスを目的とした歩行者用踏切「義経岩踏切」等が挙げられる。 第1種甲踏切(東武鉄道東上線 東第244号踏切道) 第1種手動踏切(名鉄名古屋本線・神宮前1号踏切):2012年7月1日午前0時をもって廃止済み。 第3種踏切(樽見鉄道樽見線 本巣南踏切) 第4種踏切(えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン 6番なかむら踏切) 紀州鉄道 学門駅近くの踏切。遮断機や警報機は無く、標識も設置されていないが、踏み板はある。
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