乱発問題・官僚への負担問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 08:57 UTC 版)
「質問主意書」の記事における「乱発問題・官僚への負担問題」の解説
一部議員の乱用・メディアアピール 細田博之は内閣官房長官だった当時の2004年8月5日の記者会見で、質問主意書が急増していることから民主党の長妻昭衆議院議員の質問主意書を手に取り、「平成15年の一年間での質問主意書が日本共産党が36件・337ページ、社民党が50件・426ページ、民主党が152件4235ページ、その他の党41件312ページなんですが、民主党の長妻さん(昭議員)には実に77件、3765ページに渡る質問主意書を回答しておけるわけです」「答弁が1件1521ページにもなるものもある。読み合わせで担当職員は何日も徹夜をするような対応をしている。非常に行政上の阻害要因になっている」「『自分は質問主意書日本一だ』と自慢して、選挙公報に出している人までいる。」と発言し、質問主意書制度の運用の見直しに着手することを表明した。ちなみに2003年度の全政党への質問主意書回答5220ページのうち、長妻一人で3765ページという70%超を作成させていた。これに対し野党は「国政調査権の制限である」と強く反発し、川端達夫(当時民主党国会対策委員長)は「国民の付託を受けてわれわれが要求することに、(官僚が)徹夜してでもしっかりと対応するのは当然だ」と発言し、与野党の議論が紛糾した。その後の与野党の協議の結果、衆議院の議院運営委員会で、「事前に主意書の内容を各党の議院運営委員会の理事がチェックする」ことで合意した。 長妻は通常の国会質疑の場でなくとも政府の見解を質したり情報提供を求めたりすることができ、議席の少ない野党や無所属議員にとって有用な政治活動の手段であるとして、実際にこの制度を積極的に利用する野党議員がいる。長妻は質問時間が不足しがちな少数政党や無所属の議員は、質問主意書をもって国会審議を補っているとし、質問主意書によって政府見解が明確になったり、政府の問題が明らかとなったりするメリットもあると主張している。また長妻は自身の公式サイトに、質問主意書が「野党議員にとっては、巨大な行政機構をチェック・是正出来る武器(国会法74条、75条)」で、「本質問主意書がきっかけで是正された事項も数多い」としている。2008年3月27日、民主党の平野博文は同年2月に起きたイージス艦衝突事故に関する質問主意書で「国会議員が行政情報の資料を要求したり、国会質問で説明を求めるに際し、法的根拠が必ずしも明らかではない回答拒否が頻繁に行われている」とした上で、福田内閣も「資料の要求があった場合には、政府としてはこれに可能な限り協力をすべきもの」との立場に立つものと理解して良いかと質問。これに対し福田康夫内閣総理大臣(当時)は2008年4月4日、答弁書において「議長の承認に関する事項であり、政府としてお答えする立場にはないが、衆議院においては、「議員の質問は、国政に関して内閣に対し問いただすものであるから、資料を求めるための質問主意書は、これを受理しない」 との先例があるものと承知している」と答弁した。 2010年12月、与党民主党は質問主意書について「公文書として残す意義がある例外的な場合に限る」として制限する方針を決め、今後の提出には党政策調査会の了承が必要とした。 質問主意書の件数は増加傾向にある。2018年に提出されたのは合計943本で、過去5年で最多であった。 2019年に小泉進次郎の「セクシー」発言の意味を問う質問を出した立憲民主党の熊谷裕人参議院議員(共同提出者は同じく立憲民主党の中谷一馬衆議院議員)は、他にも質問主意書を「乱発」しており、参議院に質問主意書が出された36件のうち18件は熊谷議員によるものであり、参議院議員で一人だけ突出して多い。衆議院でも数名の議員が質問主意書を連発している。上記の「セクシー発言」への答弁書がメディアで大きく取り上げられたように、閣議決定のためにメディアに大きく報道されやすい。閣議決定の内容をただ右から左へ流すだけで質を問わず、その主意書へかかったコスト・質問の意義があるのか全く問わないマスコミの責任も重いが、メディアアピールのための議員行動だと指摘されている。 毎日新聞は国会では2021年に早期通告を目指すことで与野党が一致したものの、なお長時間労働は改善されずに中央省庁の官僚たちに重い超過勤務を強いていると報道している。一般企業とかけ離れた労働環境で、国家公務員のイメージ悪化や意欲の低下につながっており、日本政府の機能さえ後退しかねない深刻な現状と指摘している。
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