丹下左膳の登場とは? わかりやすく解説

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丹下左膳の登場

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 14:51 UTC 版)

丹下左膳」の記事における「丹下左膳の登場」の解説

林不忘小説丹下左膳登場したのは、1927年に『東京日々新聞』『大阪毎日新聞夕刊で、10月15日から翌年5月31日に「新講談」と銘打って連載された「新版大岡政談鈴川源十郎の巻」だった。当初作者大岡越前ものの連作長編意図して書き始め奥州中村6万石相馬大膳亮の刀剣蒐集癖のために、夜泣きの刀の異名を持つ関の孫六の名刀、乾丸・坤竜丸という大小一対の刀を手に入れるために密命により江戸潜入する家臣丹下左膳であり、大岡越前の他、この争奪戦加わった旗本鈴川源十郎美剣諏訪栄三郎、怪剣豪蒲生泰軒などとともに登場人物に過ぎなかった。しかし二刀持ち主である神変夢想流小野鉄斎道場への乱入始めとして、次々と殺戮繰り返すニヒル個性的な人物像、右目と右腕のない異様な姿の侍という設定と、小田富弥描いた挿絵魅力によって人気急上昇した。黒襟の白の着流しというスタイル小田創案し、不忘もこれを小説取り入れた原型となる大岡政談鈴川源十郎ものは多く講談本でも扱われている題材で、邑井貞吉講談大岡政談」では、隻眼隻手日置(へき)民五郎旗本鈴川源十郎2人組んで悪行を働くというものだったが、不忘の『新版大岡政談』では全く別のストーリーになっているこの人気にあやかろうと2月には歌舞伎浪花座)、新声劇(角座)で上演され続いて映画会社3社が競ってこれを映画化した主人公演じた俳優は、団徳麿東亜キネマ)、嵐寛寿郎当時は嵐長三郎)(マキノ・プロダクション)、大河内傳次郎日活)だった。それぞれ独自の魅力発揮してヒットした新聞連載中映画製作始まり作者不忘は原稿書きながらヨーロッパ歴訪旅立っていたため、作品結末決まっていないままに映画作られた。大河内唐沢弘光カメラとのトリオ撮影した伊藤大輔監督は、裏切られたと知った左膳主君行列斬り込み、「おめでたいぞよ丹下左膳」という台詞とともに自刃するという結末として、悲劇主人公像を作り上げた伊藤大河内は『忠次旅日記』からのコンビで、独特のアクション撮影方法殺陣と、大河内グロテスクとも言える憤怒形相で、競作の中ではもっとも人気得て、「とに角何といって面白いんだからやり切れない伊藤大輔って男は全くたいし野郎だ」(岩崎昶)と評されキネマ旬報社ランキング3位となる。また帝国キネマでは『大岡政談 鈴川源十郎の巻』三部作を、日置五郎役に松本三郎配して映画化している。 ニヒル剣客像は、中里介山大菩薩峠』の机龍之介以来系譜であり、同じ1927年には大佛次郎赤穂浪士』の堀田隼人土師清二砂絵呪縛』の森尾重四郎といったニヒリスト剣客が生みだされていた。中里介山大逆事件影響受けたように、この当時芥川龍之介自殺金融恐慌山東出兵といった社会閉塞状況がこれらの登場産んだとも言え社会不合理破壊しようとするこれら剣士大衆支持したものと見られている。この小説三田村鳶魚の『大衆文芸評判記』でも取り扱われており、享保の頃の江戸の各土地柄金銭感覚言葉遣いなど槍玉に挙げられている。一方でこの作品語り口の中のモダニズムナンセンス性、女物長襦袢着込んでいるという異性装倒錯性などエロティズムグロテスクといった、昭和モダニズム織り込まれ時代小説であるという評価もされている。 不忘はこのシリーズを「新講談」と銘打ったことについて、「少数読者に向って上昇しつつある大衆文芸出発線へまで引き戻そう試みたのが、この『丹下左膳』である。その意図の下に、『新講談』なる肩書加えてみたのだ」と述べている。

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