世界に進出する改良型日本式かまど
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 22:35 UTC 版)
「かまど」の記事における「世界に進出する改良型日本式かまど」の解説
日本ではその役割を終えたかまどではあるが、アフリカや東南アジアなどといった紛争や政治的混乱により社会整備が進んでいない国や、また古代さながらの原始的生活をしている民族もおり、これらの人々は戸外で裸火による調理をしている。しかしこれらの国における樹木などの燃料資源は限られ、難民などの形で一極集中が起きた際には、瞬く間に周囲の樹木が乱伐採され枯れ果てるなどの二次的な環境破壊も発生している。 このためそのような地域では、より効率の良い調理手段が求められてもおり、これに応じて現地に日本式のかまどの作り方を伝えるなどといった運動をしているという話も聞かれる。これらでは炭の使用も含めて、森林保護に効果があると評されているという。なお難民など移動が多い場合には、七輪の利用といった運動も聞かれる。(→七輪) 国際協力機構(JICA)に所属しケニア在住の日本人食物栄養学者である岸田袈裟は、1994年に西ケニア州のエンザロ村で、其処にある材料で現地の需要に則して改良した日本式のかまどを作り上げた。これが現地で「Enzaro Jiko エンザロ・ジコ」や 「Kamado Jiko カマド・ジコ」(Jikoはスワヒリ語で「かまど」の意)と呼ばれて、好評を呼んでいるという。彼女は現地家庭の台所事情の調査の傍らや地域援助の際にこのかまど作りを伝え、更にそのかまどの作り方は現地の人々の間で伝え合われている。 このかまどは日干しレンガか石で土台を作り粘土を塗り込み形を整えて作られる。特にお金をかける必要もなく、人の手だけで数時間で作ることが可能で、2週間ほど乾かせば使用できるようになる。裸火を使った従来の炉では1度に1つの料理しか作れなかったが、改良したかまどでは同時に3種類の調理が行えることから主婦達の労力削減になる。また、従来の炉と違ってかがむ必要もなく立ったままで調理ができることから、腰痛も減り、主婦達の健康改善にも役立つ。さらに、薪の消費量が従来の4分の1で済むため、薪を集める時間と労力も節約でき、同時に森林保護にもつながる。従来は生活廃水も流入するような川の水でも沸かして飲むのは難しく、子供達の7人に1人は5歳前に病気で死んでいたが、従来の4分の1の薪で同時に3種類の調理ができる効率の良いかまどの導入によって水の煮沸消毒が容易になり、衛生的な湯冷ましを飲めるようになってからは、子供の死亡率は135人中1人に激減した。エンザロ・ジコは今ではケニアのほかの州や隣国のウガンダにも広がっている。 JICAによると、エンザロ・ジコ以外にも同機構の技術協力プロジェクトの派遣先にて日本式かまどを現地にある材料で使いながら伝える活動が行われていると言う。アフリカのマリ・ニジェール・ブルキナファソ・ルワンダ・タンザニアのほか中南米のメキシコ、また南米ではボリビアなどでもかまど作りが伝えられている。こちらはエンザロ・ジコのような石組みに土を塗る方式以外にも煉瓦を利用している地域もあるようで、従来からある煉瓦を流用した簡易炉をかまど風に組み直す活動も見られる。(例:ボリビア) こういった活動は地域の健康を促進するだけではなく、同時に家事に束縛される主婦や燃料調達に追われる子供たちの労働時間が短縮され、これによって農作業に多くの時間をかけられるようになり、地域の農業生産力が向上したり、女性の地位向上、子供の学力向上にも好影響を与えている。
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