レシプロエンジンのピストン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/30 15:19 UTC 版)
「ピストン」の記事における「レシプロエンジンのピストン」の解説
燃焼室(シリンダー)の断面は一般的に円形であるため、ピストンの断面も円形である。ガソリンエンジンの場合、効率の良い燃焼(火炎伝播)を得てかつ、バルブとの干渉を避けるために、燃焼室の形状は複雑化している。そのため、燃焼室の底面を兼ねるピストン上面も凹凸を持つことが多い(バルブリセス)。高い圧縮比を得るために、上面に大きく凸形状を与えられたり、逆に圧縮比を低く抑えるために凹形状になっているものもある。なお、ディーゼルエンジンの場合は、ピストン頭頂部を大きく窪ませて燃焼室を形成している。素材には鉄、アルミニウム合金、チタン合金などが用いられている。製造法は生産性とコストを重視する量産品の場合、現在はアルミ鋳造品が一般的である。競技車やチューニングカーに用いられる専用ピストンは燃焼時の衝撃に耐える強度を確保するため、アルミ鍛造により製作されることが多い。ピストンでエンジン運転時最も厳しい部分は、ピストンピンとピストンの界面での摩擦であり、ドイツのダウンサイジングはここにDLCコーティングを施して、ブレークスルーをした経緯がある。 シリンダー内の気体や液体がピストン側面から漏れると、効率の減少や潤滑油の希釈などが発生し危険でもある。しかしながら、シリンダーとピストンの断面の形状を全く同一にすると、摩擦による運動エネルギーの損失が生じる。そこで、ピストンの周囲に鉢巻のような構造であるピストンリングを付ける。自由状態ではシリンダ径よりも大きく出来ており、シリンダ内では外に広がろうとする張力を発生することで、側面の吹き抜けを抑えている。なお、ピストンリングは2 - 3本付けることが多い。 ピストン下部には、その形状からスカートと呼ばれる部位がある。スカートは、ピストンがシリンダー内部で傾倒するのを防止する目的でつけられる。以前はピストン全周にスカートがあったが、近年ではピストンが傾く方向、すなわちピストンピンに直行する方向にのみスカートが設けられるのが普通である。また、その長さも短くなってきている(スリッパーピストン)。スカートの形状は一見するとただの円筒のように見えるが、温間時に真円になるよう水平断面形状は楕円形状をしており、またスムーズな摺動や首振りによる打音を抑えるため、横から見ると中央付近が膨らんだ樽型をしている。一部レーシングエンジンでは、スカートをほぼ省略し、摩擦力を軽減しているものもある。近年、スカート部にコーティングを施し、摩擦力を低減している物もある。コーティングの組成はエンジン性能を直接左右するため、多くのメーカーで秘密とされるが、主にモリブデンを含むフッ素樹脂(デュポン社のテフロン®など)であると言われている。
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