リサイクルごみの輸出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 21:36 UTC 版)
「日本でのリサイクル」の記事における「リサイクルごみの輸出」の解説
回収ペットボトルの約4割が海外の再資源化業者に輸出されており、日本も含めた世界中の先進国がプラスチックごみを途上国へ輸出していることについて「海外へゴミを押し付けている」として批判がある。人件費の高い先進国では再資源化の採算が取りづらい面や、途上国の再資源化業者が資源ごみを高値で買い取っている事情もあるとされる。また、ごみを「押し付けられた」途上国では、資源ごみの再処理によって雇用が生み出されている一方で、ごみの大量輸入や自国内のごみにより再処理が追いつかず、不法投棄や野焼きなどの環境問題を引き起こしているとされる。 日本の2017年の廃プラスチック輸出量は143万トンであった。日本は香港、米国に次ぐ世界第3位の廃プラスチック輸出大国であり、その世界シェアは11.9%であった。2017年に日本から輸出した廃プラスチックのうち、52.3%(約75万トン)が中華人民共和国向けであった。日本は2011年以降、廃プラスチックの50%以上を中国へ輸出する状況が続いていた。 しかし2017年末から、中国が主に生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止したことで、日本は廃プラスチックの新たな輸出先を検討せざるを得なくなった。 2019年の廃プラスチック輸出量は、中国の輸入禁止の影響と後述する東南アジアの輸入規制も相まって、約89万8,000トンとなり、2014年以降減少し15年振りに100トンを割った。2019年に日本が輸出した廃プラの50%以上が東南アジア(マレーシア約29.1%、タイ約13.0%、ベトナム約11.4%)へ輸出されていた。 また、マレーシアに次いで輸出先第2位である台湾へは約16.9%であり、この4か国で約7割を占めることとなり、マレーシアは前年と比べて増加している。 また2018年以降、輸入・利用規制が厳格化しつつある。2018年6月にタイとベトナムがいち早く規制し、翌月にはマレーシアでも規制が開始された。その後、インドネシアで輸入規制・禁止が検討され、インドでは2019年8月31日から全面輸入禁止となった。そのため、今後も輸出量が減少することは必須とみられ、さらには相手国の同意も必要となる。 そして、中国に代わる廃プラスチックの輸出先が現れる可能性は低く、日本の廃プラスチックは行き場を失いつつある。そして、行き場を失った廃プラスチックの一部は、日本国内で処理されるようになりつつある。 2019年5月に環境省が発表した「外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果報告書」によれば、自治体の32.0%、収集運搬業者の15.8%、中間処理業者の46.1%が、2017年12月以前と比べ、廃プラスチックの「保管量が増加した」と回答した。このうち、2018年度下半期で保管上限の超過等、保管基準違反が発生したとの回答が15件あった。また、改善命令の発出に至ったものが2件あった。 廃プラスチック類の処理量についても、中間処理業者の51.9%、最終処分業者の33.3%が増加したと回答した。更には、中間処理施設における処理能力に対する稼働状況は、16.0%で「10割」、45.9%で「8割以上~10割未満」という回答が得られ、約6割の施設が高い稼働率で処理していることが分かる。ただし2020年6月発表の報告書では、前年より緩やかになっていると報告されている。 2019年5月10日、ジュネーブで開かれたバーゼル条約締約国会議で、リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみを同条約の規制対象とする改正案を採択した。バーゼル条約は有害廃棄物の定義や輸出入を規定する国際条約で、約180の国・地域が批准している。改正された条約は2021年1月1日から施行予定で、今後汚れたプラスチックごみを輸出する際に相手国の同意が必要となる。そのため今後、海外へ廃プラスチックを輸出することはより困難となる。
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