マニアの功罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/31 07:41 UTC 版)
オーディオ趣味は古くは19世紀の蓄音機などにまで遡り、オーディオが産業として成立してからでもその歴史は100年をゆうに超える。 オーディオ産業では、機材の購入者・ユーザー・批評者として、数多のオーディオマニアが機材・テクノロジーやさらにはオーディオ文化そのものの発展の一翼を担ってきた。オーディオ機器の製造メーカーにとっても、新技術・新製品の開発計画や販売戦略を立てるにおいて、大勢としてのオーディオマニアの動向は無視できないものになっている。また、肯定・否定のいずれにしても、著名なオーディオマニアが下した評価が機器・パーツの売れ行きを直接・間接に左右することもこの業界では少なからず起きる。 だが、そのオーディオマニア層には特定の機器やメーカーへの思い入れやこだわりを非常に強く抱いている者が少なからず見られ、得てして他者のシステムや自分の気に入らないメーカーやテクノロジーに対して冷淡な評価を下す傾向があり、その様な言動を声高に行う者が見られる。また、リスニングではなく他者への自慢を目的に高級機器や希少価値の高い機器を蒐集したり機器を自作するといった唯我独尊タイプや、プロ向けとして高品位を謳う機種を至高としてコンシューマー向け機器を全否定・唾棄する言動、さらにはコンシューマ向け機器の性能で実用十分と満足している層を「本物の音楽を聞く耳が無い」などという形に決め付けて馬鹿にする様な言動に終始する者も存在しており、インターネット上の掲示板などで激しい論争や批判に発展することもしばしばある。こうしたマニアの存在は、オーディオ入門者や単純に好みの音楽を良い音で楽しむ手段として自身の予算に応じた機器を買い求める一般愛好家にとっては参考にならずむしろ迷惑なものであり、オーディオ業界の各機器メーカー・販売店にとってすら新たな顧客拡大への阻害要因と判断され看過できない場合がある。 この様な一部マニアの存在も一因となって、高級オーディオ専門店であっても富裕層やエルダー層(時間・購買力に余裕のある中高年層)をメインターゲットとしている店舗の中には、「音楽を楽しむ」のではなく機材を買い漁る、あるいは試聴や店員相手に自分の批評を開陳することだけを目的に来店するなど、品格面に欠ける言動をする「オーディオ機材マニア」はお断りという姿勢を明確に打ち出しているところもある。 また、上記のような極端なマニアは「入場お断り」として、低価格オーディオの利用者層を対象にハイエンドと呼ばれる製品に触れてもらい、本格オーディオ機器の普及拡大を目指したイベントが開催された事もある。このイベントでは、来場者が持参した2000年代の主流であるデジタルオーディオプレーヤーやCDなどを、業界団体「my-musicstyle実行委員会」の専門家が構築したオーディオシステムに音源として投入し、本格的なシステムの奏でる音を「ちゃんとした音」と位置付けて、テーマ別に音響面でもインテリア面でも調和した環境で聞かせるという趣向が組まれていた。
※この「マニアの功罪」の解説は、「オーディオマニア」の解説の一部です。
「マニアの功罪」を含む「オーディオマニア」の記事については、「オーディオマニア」の概要を参照ください。
- マニアの功罪のページへのリンク