マダニ媒介性感染症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/30 18:42 UTC 版)
マダニ科のダニは、吸血の際に様々な病原体を伝播させるベクターとして知られる。2020年代になって新たに確認されるウイルスもある。以下に、媒介する感染症の代表例を挙げる。 日本紅斑熱 かゆみのない発疹や発熱などの症状が出た時点で、点滴と抗生物質の投与などの治療を受ければ大事には至らないが、受けないと最終的には高熱を発して昏倒に至ることがある。咬傷が見当たらなくても、医師に、(マダニと接触した可能性がある)キャンプやハイキングなどに行ったと伝えておけば、診断しやすくなる。 Q熱 治療が遅れると死に至るうえ、一度でも重症化すると治っても予後は良くない。山などに行った後、皮膚などに違和感を覚えたり、風邪のような症状を覚えたりしたら、この病気を疑うべきである。日本紅斑熱の場合と同じく、キャンプやハイキングなどに行った後に何らかの症状が出た場合は医師に伝えることが推奨される。 ライム病 ノネズミやシカ、野鳥などを保菌動物とし、マダニ科マダニ属 Ixodes ricinus 群のマダニに媒介されるスピロヘータの一種、ライム病ボレリアの感染によって引き起こされる人獣共通感染症の一つ。 回帰熱 ヒメダニ属、マダニ属に媒介されるスピロヘータ科の回帰熱ボレリアによって引き起こされる感染症。発熱期と無熱期を数回繰り返すことから、この名がつけられた。1950年以降は日本での国内感染が報告されていなかったが、2013年に国立感染症研究所でライム病が疑われた患者血清800検体の後ろ向き疫学検討を行ったところ、回帰熱ボレリアの一種であるB.miyamotoiのDNAが確認された。 ダニ媒介性脳炎 マダニ属のマダニが媒介するウイルス性感染症。ヨーロッパ亜型、シベリア亜型、極東亜型の3亜型に分類される。脳炎による神経症状が特徴的。東ヨーロッパやロシアで流行がみられ、日本では北海道で2019年までに5例の国内感染例が報告されており、死亡例や重篤な後遺症が認められている。 重症熱性血小板減少症候群 SFTSウイルスの感染によって引き起こされる感染症で、本症候群に起因する死亡事例が2013年に国内で初めて発表された。症状は1週間から2週間の潜伏期間を経て発熱、嘔吐、下痢などが現れる。重症患者は、血球貪食症候群を伴って出血傾向を呈す例が多い。西日本では、96人が感染して発熱や出血などの症状を訴えた後に30人が死亡しているため、2014年2月25日には田村憲久厚生労働大臣が「草木の多い所に入る時は、肌をなるべく出さないように」と注意を呼びかけた。
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