マサテコ族との関わり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 14:44 UTC 版)
「サルビア・ディビノラム」の記事における「マサテコ族との関わり」の解説
マサテコ族はメキシコ合衆国オアハカ州北東部の山岳地帯および高原地帯を拠点とする少数民族である。スペイン人の征服により人口が減少しており、1970年の推定では総人口92,450人である。 メキシコ先住民族はスペイン人征服以前から、マジックマッシュルームや幻覚性アサガオを使用していることが記録されているが、サルビア・ディビノラムを使用していたかどうかは明確ではない。例えば16世紀のスペイン人征服者の記録にある、アステカ名"pipiltzintzintli"という植物がその作用からサルビア・ディビノラムをさすという学説もあるが確定はしていない。 マサテコ族社会においてサルビア・ディビノラムは重要な宗教的地位を占めている。現地名でサルビア・ディビノラムはska Mariaないしはska Pastoraと呼ばれており、聖母マリアの化身であると考えられている。このような宗教的側面から英語圏ではSage of the Seers(予言者のセージ)やDiviners’ Sage(占い師のセージ)と呼ばれる。また、非常に神聖視されているため、その栽培場所は秘匿されており、近代に至るまで西欧の記録に載らなかった理由の一つとなっている。しかしながらサルビア・ディビノラムの起源については明らかではない。スペイン人による征服以前からマサテコ族が現地に居住していたことは確認されているが、S. divinorumがそれ以前から自生していたのか、あるいは人為的に交配されたものなのであるかは判明していない。しかしながら伝統的にS. divinorumの使用を行っているのはマサテコ族のみであるため、マサテコ族ないしは滅亡したアステカ族がその起源に深くかかわっていると推測される。また前述した通り、サルビア・ディビノラムは受粉による栽培が難しいため、マサテコ族は株分けによってサルビア・ディビノラムを栽培しており、マサテコ族がもつサルビア・ディビノラムはすべてクローン個体である。また野生とされるサルビア・ディビノラムもすべてマサテコ族の旧居住地近くから発見されていることから、サルビア・ディビノラムが栽培種であるという仮説も提唱されている。 マサテコ族におけるサルビア・ディビノラムの利用は医療目的と宗教的目的であるがその区別はあいまいである。例えばサルビア・ディビノラムの葉を5枚ほど手ないしは石臼で刻み、水に浸したものを経口摂取することで頭痛の解消や、リュウマチ症状の緩和を行う万能薬として利用する。一方で敵対する呪術師が「腹に石を詰め込む」呪いをかけてきた場合の対抗手段として、聖母マリアの化身であるサルビア・ディビノラムを摂取することで「腹に詰め込まれた石を取り除く」ことができるとも考えられている。またサルビア・ディビノラムの葉50枚分を病人に摂取させることで、幻覚症状を惹起しその病気の原因について患者自身に語らせるないしは、呪いをかけている敵について語らせるという方法もとられる。 また、サルビア・ディビノラムはシャーマンの宗教的訓練の入門として利用されることもある。マサテコ族のシャーマンは2年以上に及ぶ宗教的訓練を行うが、「天国の風景を見る」ために幻覚性の植物を用いる。サルビア・ディビノラムやマジックマッシュルーム、タービナ・コリボサの種(リゼルグ酸アミドを含む)などが用いられるが、このうち最も効果が軽いサルビア・ディビノラムが最初の訓練に用いられる。このような訓練を行うことで、聖母マリアやその他の聖人の知恵を授かることができると考えられている。
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