T-7 (航空機・アメリカ)
(ボーイングT-X から転送)
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ボーイング T-7A レッドホーク
ボーイング/サーブ T-7(Boeing/Saab T-7)は、ボーイングとサーブにより開発されたアメリカ合衆国とスウェーデンの高等練習機。
アメリカ空軍で運用中で、初就役から半世紀以上経ったノースロップ(現・ノースロップ・グラマン)T-38 タロンを置き換えるための高等練習機(TX)プログラムの勝者[1]として、2018年9月27日にアメリカ空軍によって選定された。2019年9月16日に制式名称を「T-7A レッドホーク」とすることが発表された[4]。
開発
ボーイングT-Xは2016年9月13日に発表され[5]、初飛行は2016年12月20日に行われた[6][7]。開発では、三次元モデリングや風洞実験の仮想現実化などのデジタル化で、開発に要する時間とコストが短縮された[1]。
2018年9月27日、ボーイングT-XがT-38に代わってアメリカ空軍の新しい高等練習機になることが正式に発表された。導入にあたっては、機体の性能や運用コストのみではなくフライトシミュレータや脱出訓練用シミュレータ、兵器訓練用シミュレータなど、実機を用いない訓練装置の完成度が評価された[1]。予定は351機とフライトシミュレータ46台であり、予算は92億USドルとされている[1][8][9][10]。
設計
機体
ボーイングT-7Aは単発ジェット機で、肩翼配置の主翼と双垂直尾翼を有する。主翼は前縁付け根に機動性を高めるためのストレーキ、前縁にはスラット、後縁にフラッペロンを持つ。水平尾翼は全遊動式で、主翼のフラッペロンと垂直尾翼の方向舵と共に操縦翼面を構成する。動翼の操縦はフライ・バイ・ワイヤで行われる。水平尾翼と垂直尾翼の安定板は左右同形で、損傷時にも容易に交換できるようになっている[1]。
着陸装置は引き込み式三輪で、いずれもシングルタイヤである。ブレーキは主輪のみ装備する[1]。
操縦席
射出座席はボーイングACESIIの改良型であるコリンズACES5で、対地速度0-550kn、脱出高度0-1万5,240m、パイロットの体重は45-205kgと対応可能な速度・高度・体重いずれも向上している。操縦席は後席が前席より高いタンデム座席で、グラスコックピット化してタッチパネルや多機能ディスプレイを採用した先進コックピットである。操縦桿はジョイスティック式で、ボーイング製の機体で軍用・民用通して初めて、右側にシフト配置したサイドスティック式である。風防は、整備や点検、交換が容易な横開きのキャノピーを採用した[1]。
T-7AはT-38より高度なアビオニクスを搭載しており、F-35への移行を想定した訓練が可能である。T-7には、F-35に搭載されているヘッドマウントディスプレイが仕様に盛り込まれなかったため、従来のヘッドアップディスプレイが搭載されている。これらの機器は、今後運用される新たな機器への交換や追加が可能である[1]。
エンジン
エンジンはゼネラル・エレクトリック社のF404-GE-103ターボファンエンジンを搭載している[11]。このエンジンはF/A-18C/DのF404-GE-402をT-7用に改修したもので、アフターバーナー使用時の定格出力が抑えられている。また胴体後部のエンジン搭載部は下方に大きなアクセスパネルがあり、エンジンを機体下部から着脱できるため、整備効率が大幅に向上している[1]。
搭載されている燃料タンクはブラダー式燃料より安全性が高い単一壁式で、背部にはオプションでフライングブーム式の空中給油受油装置が装備可能である[1]。
運用
T-7Aに関する地上での訓練と支援は、T-38を代替するアメリカ空軍T-X計画のためにボーイングとスウェーデンの航空宇宙グループパートナーであるサーブにより開発・提供されている[12]。ボーイングとサーブは、2013年12月6日にアメリカ空軍T-X計画コンペティションのためのパートナーシップ契約を締結した[13]。アメリカ空軍の主契約者はボーイングで、契約上はアメリカ製の機体とされている[1]。
2019年時点で、日本をはじめとしたF-35を採用した海外諸国への売り込みや軽攻撃機への転用も視野に入れている。また1982年までT-38を運用し、1983年以来40年以上F-16を運用している曲技飛行隊サンダーバーズの代替機の可能性が指摘されている[1][14]。
2022年4月28日、ボーイングは技術・製造開発段階の初号機が完成し、ロールアウト式典が開催された。初号機の垂直尾翼は赤く塗装されが、これは配備先の第99飛行訓練飛行隊の前身で、第二次世界大戦中に編成された第99追撃飛行隊に所属するP-51Dの尾翼が赤く塗装されていたことに由来する[1]。2023年9月16日、ボーイングはT-7A初号機をアメリカ空軍に納入したことを発表した[15]。
採用
諸元
諸元はAir Force Magazineによる[16]
- 乗員: 2名
- 全長: 14.30m (46.9ft) または14.15m[1]
- 全幅: 9.33m (30.6ft)
- 全高: 4.11m (13.5ft) または3.99m[1]
- 空虚重量: 3,250kg[1]
- 最大離陸重量: 5,500kg(12,125lb)
- エンジン: ゼネラル・エレクトリック F404-GE-103 ターボファンエンジン×1基
- 推力(アフターバーナー使用時)17,200lb
- 最大速度: 702kn (マッハ 1.04)[1]
- 巡航速度: 526kn (974.14km/h)[1]
- 航続距離: 1,140マイル(990海里)
- 最大高度: 15,240m(50,000フィート)以上
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 青木謙知「"T-X計画の覇者"アメリカ空軍新高等練習機ボーイングT-7A初号機ロールアウト」『航空ファン』通巻836号(2022年8月号)文林堂 P.60-65
- ^ Tyler Rogoway (2018年9月28日). “Boeing's T-X Win Is Really Much Bigger Than Just Building A Replacement For The T-38 - The Drive”. thedrive.com. 2018年9月28日閲覧。
- ^ Steve Trimble (2018年10月24日). “Details Emerge On Costs, Rewards Of Boeing Low-Cost T-X Bid Defense content from Aviation Week”. Aerospace Daily & Defense Report. 2018年10月24日閲覧。
- ^ “Air Force announces newest Red Tail: ‘T-7A Red Hawk’”. U.S. AIR FORCES IN EUROPE & AIR FORCES AFRICA (2019年9月16日). 2019年9月16日閲覧。
- ^ “Boeing T-X Sees the Light”. Boeing. 2017年4月10日閲覧。
- ^ “Boeing and Saab complete first T-X flight”. Flight Global. (2016年12月20日) 2018年9月28日閲覧。
- ^ Niles, Russ (2016年12月20日). “Boeing/Saab T-X First Flight”. AVweb. 2016年12月21日閲覧。
- ^ “Air Force awards $9B contract to Boeing for next training jet”. Defense News. (2018年9月27日) 2018年9月28日閲覧。
- ^ “Air Force awards next-generation fighter and bomber trainer”. Saab. 2018年9月28日閲覧。
- ^ O'Connor, Kate (2018年10月2日). “Air Force Selects New Combat Trainer”. AVweb. 2018年10月3日閲覧。
- ^ “Boeing T-X Advanced Pilot Training system”. Saab. 2016年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月28日閲覧。
- ^ Clark, Colin. “Boeing Takes T-X Lead as Northrop Joins Raytheon & Drops Out of T-X”. Breaking Defense 2017年4月16日閲覧。
- ^ “Boeing and Saab Sign Joint Development Agreement on T-X Family of Systems Training Competition”. Boeing. 2017年4月10日閲覧。
- ^ “ボーイング社、次期超音速高等練習機「TX」を日本に積極売り込みへ”. 産経新聞 (2019年3月19日). 2019年5月3日閲覧。
- ^ “ボーイング、「T-7Aレッドホーク」米空軍へ納入!T-38タロン練習機更新へ”. 航空ファン・飛行機利用者のためのサイト FlyTeam(フライチーム) (2023年9月26日). 2024年2月9日閲覧。
- ^ T-7A Red Hawk.
関連項目
外部リンク
- 公式ウェブサイト
- T-X練習機 - ボーイング ジャパンによる紹介。
- Saab T-7A Red Hawk
ボーイング T-X
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/09 16:39 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動ボーイング T-X
ボーイング/サーブTーXは、ボーイング社とサーブ社により開発されたアメリカ合衆国とスウェーデンの高等練習機。ノースロップ(現・ノースロップ・グラマン)T-38 タロンを置き換えるために高等練習機(TX)プログラムの勝者として2018年9月27日にアメリカ空軍によって選定された。2019年9月16日制式名称を「T-7Aレッドホーク」とすることを発表した[3]。
設計・開発
ボーイングT-Xは、単発エンジンを備えた高等練習機であり、双垂直尾翼、タンデム座席、引き込み式三輪の着陸装置を備える。この機体はゼネラル・エレクトリック社のアフターバーナー付きF404ターボファンエンジンを搭載している[4]。双垂直尾翼は良好な安定性と制御を提供し、ブームとレセプタクルを使用しての飛行中の燃料補給が可能である(別名フライングブームシステム)
ボーイングT-Xとそれに関連する地上での訓練と支援は、T-38を代替するアメリカ空軍T-X計画のためにボーイングとスウェーデンの航空宇宙グループパートナーであるサーブにより開発・提供されている[5]。ボーイングとサーブは、2013年12月6日にアメリカ空軍T-X計画コンペティションのためのパートナーシップ契約を締結した[6]。
2016年9月13日に発表され[7]、初飛行は2016年12月20日に行われた[8][9]。
2018年9月27日に、ボーイングT-XがT-38に代わってアメリカ空軍の新しい高等練習機になることが正式に発表された。導入予定は351機とフライトシミュレータ46台であり、予算は92億USドルとされている[10][11][12]。
T-38より高度なアビオニクスを搭載しており、F-35への移行を想定した訓練が可能である。2019年時点で、日本をはじめとした海外への売り込み、軽攻撃機(COIN機)への転用も視野に入れている[13]。
採用
- アメリカ空軍 - 351機を予定。
諸元
- 乗員数:2
- 全長: 14.15m (46.42フィート)
- 全幅: 10.00m (32.81フィート)
- 全高: 4.00m (13.12フィート)
- 機体重量: 3,250kg (7,165lb)
- 最大離陸重量: 5,500kg(12,125lb)
- エンジン数:1
- エンジン:ゼネラル・エレクトリック F404
- エンジン形式:アフターバーナー付きターボファン
- 推力:11,000lb
- 推力(アフターバーナー使用時)17,700lb
- 最大速度 1300km/h(808mph、702kts)
- 航続距離 1,143マイル(994海里)
- 最大高度 15,240m(50,000フィート)
- 上昇率 33,500フィート/分
脚注
- ^ Tyler Rogoway (2018年9月28日). “Boeing's T-X Win Is Really Much Bigger Than Just Building A Replacement For The T-38 - The Drive”. thedrive.com. 2018年9月28日閲覧。
- ^ Steve Trimble (2018年10月24日). “Details Emerge On Costs, Rewards Of Boeing Low-Cost T-X Bid Defense content from Aviation Week”. Aerospace Daily & Defense Report. 2018年10月24日閲覧。
- ^ “Air Force announces newest Red Tail: ‘T-7A Red Hawk’”. U.S. AIR FORCES IN EUROPE & AIR FORCES AFRICA (2019年9月16日). 2019年9月16日閲覧。
- ^ “Boeing T-X Advanced Pilot Training system”. Saab. 2018年9月28日閲覧。
- ^ Clark, Colin. “Boeing Takes T-X Lead as Northrop Joins Raytheon & Drops Out of T-X”. Breaking Defense 2017年4月16日閲覧。
- ^ “Boeing and Saab Sign Joint Development Agreement on T-X Family of Systems Training Competition”. Boeing. 2017年4月10日閲覧。
- ^ “Boeing T-X Sees the Light”. Boeing. 2017年4月10日閲覧。
- ^ “Boeing and Saab complete first T-X flight”. Flight Global. (2016年12月20日) 2018年9月28日閲覧。
- ^ Niles, Russ (2016年12月20日). “Boeing/Saab T-X First Flight”. AVweb. 2016年12月21日閲覧。
- ^ “Air Force awards $9B contract to Boeing for next training jet”. Defense News. (2018年9月27日) 2018年9月28日閲覧。
- ^ “Air Force awards next-generation fighter and bomber trainer”. Saab. 2018年9月28日閲覧。
- ^ O'Connor, Kate (2018年10月2日). “Air Force Selects New Combat Trainer”. AVweb. 2018年10月3日閲覧。
- ^ “ボーイング社、次期超音速高等練習機「TX」を日本に積極売り込みへ”. 産経新聞 (2019年3月19日). 2019年5月3日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 公式ウェブサイト
- T-X練習機 - ボーイング ジャパンによる紹介。
- Saab T-7A Red Hawk
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「ボーイング T-X」の例文・使い方・用例・文例
- ボーイング社は上記について以下の理由により答えた。
- ボーイング社は海上自衛隊用の飛行艇を開発しました。
- 世界の旅客機の半数以上を製造しているボーイング社は、もっともなことだが、機体の他に欠陥を起こす可能性のあるものに、注意を引こうと躍起になっている。
- 安全性が改善されない限り、2010年までにジェット旅客機は週に1度の割合で空から落ちる事態になっている可能性があると、ボーイング社の分析は予測している。
- ボーイング社はCFITを引き起こす一連の乗務員のミスの可能性を推定した。
- ボーイング社の分析は過去10年間のあらゆる事故の60%以上が乗務員の行動が主要な原因だったことを示している。
- ボーイング社の安全担当の専門家は航空産業の他の専門家と一緒になって制御飛行中の墜落(CFIT)として知られている墜落事故をなくそうと国際的な対策委員会を組織している。
- その分析によって、ボーイング社は、他にも問題があったかもしれないが、乗務員が彼らの任務を正しくやっていれば、事故を回避することができただろうと、言いたいのである。
- 模型はボーイング747型機のものである。
- ボーイング787型機ドリームライナーが初公開
- 米国の航空機メーカー,ボーイング社が7月8日,同社の新しい民間航空機787型機ドリームライナーを公開した。
- 世界中の航空会社の役員や航空機部品メーカーの代表者など,およそ1万5000人が米国ワシントン州にあるボーイング社の工場で787型機の初披露を祝った。
- 7月8日現在,ボーイング社は47の航空会社から航空機677機を受注している。
- ボーイング社によると,787型機は民間航空機として出だしが最も成功している。
- 元オリンピック選手7人の顔と彼らから代表選手への手書きのメッセージがボーイング777-300ジェット機の側面に塗装されている。
- この航空機,ボーイング747-400型機はフライトに必要な分より少しだけ多い量の燃料で満たされた。
- ボーイング社は,3年以上遅れて,ついに787型機「ドリームライナー」の1号機を全(ぜん)日(にっ)空(くう)に引き渡した。
- スタジオジブリ,JALの新型機ボーイング787の塗装に協力
- 10月13日,日本航空(JAL)は,スタジオジブリと協力して塗装を施した新型機ボーイング787ドリームライナーを公開するイベントを行った。
- 5年前,JALとスタジオジブリは,ボーイング787の導入を記念して,子どもたちの絵画コンクールを共同で行った。
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