ベルナールの個別反対意見書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 09:06 UTC 版)
「極東国際軍事裁判」の記事における「ベルナールの個別反対意見書」の解説
アンリ・ベルナール判事は 梅汝璈中国代表判事に対して1948年7月26日に「正義は連合国の中にあるのではないし、その連合国の誰もが連合という名の下にいかなる特別な敬意を受けることができるわけでもないのだ」と述べている。また南次郎が満州事変を「自衛権の発動」と承認した時に多数派判事が非難するなかベルナール判事は満州事変は「ありふれた事件」でしかなく、また「自衛すべきであると思うときには自衛権がある」「この決まりは実際に攻撃も侵略もないケースにおいても自衛権の発動を妨げるものではない」と述べた。満州事変問題については「事変と称されている事実が起きた時点では、支那国民党政府自身、まだ日本を敵国とみなしていなかった」として、当時の日支衝突を日本側の行為だけを非とするのはおかしいとし、また「我々は、あらゆる大国が自らにとっての生命線を自国内ではなく他の国に置いてきたことを了承してきたし、今日でも了承しているではないか。チャーチルはイギリスの生命線をライン河に置いてきた」とものべ、さらに「法的な解決、あるいは仲裁のイニシアティブをとるべきであったのは、日本によって行使される特権の廃止を求めていた支那側にあった」と主張した。また、オーウェン・カニンガム弁護人が東京裁判を「茶番劇」と批判したことについて判事たちが法廷から追放したことについては、いかなる制裁措置も適用されてはならないと批判した。共同謀議については定義が曖昧で、被告が共同謀議に成功したとする多数派判決について「疑わしく」、「正式な証拠がない限り、この疑いを消えないし、また被告を有罪とすることは許されない」とのべた。 ベルナールの個別反対意見書では、自然法は国家の上位にあり、自然法によって侵略戦争が犯罪であることは証拠があれば可能である、しかし日本の侵略陰謀の直接的証拠はなく、東アジアを支配したいという希望の存在が証明されたにすぎないから平和に対する罪で被告を有罪にすることはできない。また検察官が起訴した人間を裁くだけであること、天皇が不起訴であったことは遺憾と述べた。また東京裁判で予審が行われなかったことについて「訴追が最も重大な性質の犯罪に関したものであり、その立証が非常に大きな困難をもたらすものであったという事実にもかかわらず。被告は直接に本裁判所に対して起訴され、かれらは、予審という方法によって弁護側資料を手に入れたり、まとめたりするように努力する機会を与えられなかった。予審は、検察側からも弁護側からも独立した司法官が双方に同等に都合のよいように行うものであって、その間に被告は弁護人の援助によって利益を得たであろうと思われる。本官の意見では、この原則の違反から起こる実際の結果は、本件においては特に重大である」と主張した。また、「裁判所が欠陥のある手続きを経て到達した判定は、正当なものではあり得ない」と東京裁判について断じた。
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