フランス法の体系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/06 15:13 UTC 版)
「フランス法」という概念が文献に最初に登場したのは16世紀のことで、当時のフランス法の概念は、教会法やローマ法を含まず、王令、慣習法、パリ高等法院の判例などフランスの領土内で適用される法を指していた。このように、フランス法の概念の定義を地理的観点からみると、植民地に住むフランス国民に対してはフランス法の適用ができないという不都合が生じる。観念的観点からみると、フランス第一帝政期に法典化され、整理して発布された法ということになるが、これでは慣習法や、特にフリードリヒ・カール・フォン・サヴィニーの影響によりドイツ法を特徴づけたローマ法を定義に取り込めないという不都合が生じる。 今日では、フランス法の概念は、観念的な内容と実質的な内容の両方を取り入れたものになっている。観念的な観点からみると、成文化され法典化された構造の上に成り立つ法制度を指し、ローマ・ゲルマン法の影響を受けた他のヨーロッパ法もコモン・ローの法制度も含まない。実質的な観点からみると、厳密な意味でいえば、フランスの公権力が発布した法規範を指すが、広い意味でいえば、フランス法とはフランスにおいて事実上(正統な立法機関が制定したものではなく、その通用力が慣習や条理に基づくにすぎないものも含めて)適用されている法規範を指す。 フランス法は、講学上、私法 (droit privé) と公法 (droit public) の二つ領域に分けることができ、公法には、憲法 (droit constitutionnel) や行政法 (droit administratif) が含まれる。 私法は、ローマ法の伝統に従い民法 (droit civil) だけでなく、刑法 (droit pénal) も含まれる点で、ドイツ法や日本法と異なっている。 実務用語(フランスの法律家が日々の拠り所として駆使している用語)としては、フランス法には民法、刑法及び行政法の3つの基本的な法領域があるといえる。 欧州委員会の2005年11月の声明は、最近の欧州司法裁判所の決定において承認された権限に基づけば、1ダース程度の欧州連合 (EU) 刑事犯罪法案を創るということは、 欧州連合法( droit communautaire 、あるいはあまり正確ではないが、 droit européen ともいわれる。)をフランスにおける第4の法領域と考えるべきであるということを意味するのであって、これを単にフランスの民法、刑法及び行政法の内容に影響を与える規範の集合体と考えるべきではない、と述べている。 法令には以下のような種類のものがある。 法律(loi) オルドナンス(ordonnance;fr:Ordonnance en droit constitutionnel français) - 「立法の領域で行政権が制定することができる命令の一種」「国会の授権による立法」 デクレ(Décret) - 「共和国大統領および首相が行う一方的な行政行為である命令の総称」「共和国大統領または首相によって署名された、一般的効力を有するまたは個別的効力を有する執行的決定」 アレテ(arrêté、行政命令) - 「大臣,県知事,コミューンの長およびその他の行政機関の命令,処分および規則の総称」「1もしくは複数の大臣(大臣アレテ、共同大臣アレテ)、または他の行政庁が発する一般的または個別的な効力範囲を持つ執行的決定」
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