ファーンズワース・ライトの時代(1924年5月号~1940年4月号)
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「ウィアード・テイルズ」の記事における「ファーンズワース・ライトの時代(1924年5月号~1940年4月号)」の解説
2代目編集長ファーンズワース・ライト(en:Farnsworth Wright)は、同誌の看板編集長となった。 ライト自身も小説を書いていたはずだが、本人は忘れてしまったと振り返っている。192ページになる豪華版1924年5・6・7月合併号は、ベアードの名前で発刊されたが、実質はライトとオーティス・クラインが編集した。ライトはパーキンソン病に苦しんでおり、自分で署名することも出社や退社にも助けが要るほどだった。彼の名前で発刊された最初の刊は1924年11月号で、それ以降、定期的に発刊されるようになった。彼は、ベッドシーツサイズだった印刷用紙を元のサイズに戻し、作家たちへの支払い率を最終的に1語、1.5セントにまで上げた。 しかし、ライトの采配と関係なく親会社ポピュラー・フィクション・パブリッシングは『オリエンタル・ストーリーズ』を発刊し3年間、売り上げ不振となり社長のコーネリアスが辞めるまで続けられた。1930年に銀行が資本を凍結し、この年の発刊は、2・3月合併号、4・5月合併号、6・7月合併号の隔月に移行し8月号から通常に復帰した。1938年にコーネリアスが引退するとウィリアム・J・デラニーがポピュラー・フィクション・パブリッシングを購入した。ライトらウィアード・テイルズの社員にも株式が分配され、シカゴとニューヨークにあった二つの編集事務所はニューヨークに移され、ライトも移住した。デラニーが経営者となると方針が転換され、1939年2月号は、144ページから160ページに増量し、値段も引き上げられた。これは収益を向上させるためだったが、裏目に出る。同年9月号にも128ページにまで減らされ値段も25セントから15セントに引き下げられた。それでもダメージが抜けず1940年1月号からは隔月になり、これが廃刊まで続いた。1940年3月にライトは辞表を提出した。これが健康上の理由だったのか売り上げ不振に責任を感じたのかは、不明となっている。 ライトは、ベアードよりも多くの作家、多くの選択肢を持っていたにもかかわらず、ラヴクラフト、スミス、クインの作品を掲載し続けた。但し、ラヴクラフトの代表作である「狂気の山脈にて(At the Mountains of Madness)、「インスマウスの影(Shadow Over Innsmouth)」、「クトゥルフの呼び声(The Call of Cthulhu)」は掲載を拒否され、スミスの描くヒロイック・ファンタジー「ハイパーボリアもの」の多くもまた同様に掲載を拒否されている。このこともあってラヴクラフトのライトに対する評価は低く、商業主義者と断じていたこともある。 ライトは、新たな作家としてハリー・フーディーニ、ロバート・ブロック、ロバート・E・ハワード、C・A・スミス、フランク・ベルナップ・ロング、オーガスト・ダーレス、エドモンド・ハミルトンなどを起用した。また彼は脚本家テネシー・ウィリアムズの作品を最初に出版したことでも知られる。なかでも特筆すべきは、1933年から同誌の表紙画家として、ファッション・デザイナー兼イラストレーターのマーガレット・ブランデージ(en:Margaret Brundage)を起用したことである。彼女はセミヌードもしくは裸体であるかのように見える刺激的なポーズのうら若き美女(そしてもちろん怪物や悪漢たち)をモチーフにし、「Damsel in distress」のテーマのもと、多くの素晴らしいイメージを作り出した。彼女の作品はあまりに扇情的過ぎるとして大論争を起こした一方、同誌の売れ行きに大いに貢献した。更にライトはファンタジーアート史上重要な2人のアーティスト、ヴァージル・フィンレイとハネス・ボクを世に出したことでも知られる。 しかし1936年6月にハワードが自殺し、翌1937年3月にはラブクラフトが病没、1939年2月にライバル誌『ストレンジ・ストーリーズ』、3月に『アンノウン』が参入したことなど不運が続き、1940年6月には持病であったパーキンソン病によってライト自身が死去。『ウィアード・テイルズ』の第二期は、終焉を迎える。
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