ファヨールの管理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 21:20 UTC 版)
「アンリ・ファヨール」の記事における「ファヨールの管理論」の解説
ファヨールは、著書『産業ならびに一般の管理』で、企業の経営活動(職能)を次の6つに分類した。 技術活動(生産、製造、加工) 商業活動(購買、販売、交換) 財務活動(資本の調達・運用) 保全活動(設備および従業員の保護) 会計活動(財産目録、貸借対照表、原価、統計など) 管理活動(計画、組織、指揮、調整および統制) ファヨールは、中でも管理活動を重要視し、『管理とは、計画し、組織し、指揮し、調整し、統制するプロセスである。』と定義した。管理の一般原則として、次の14の管理の原理を示した。 分業 権威と責任 命令する権限と、それに伴う責任 規律 命令の統一(一元化) 特定の業務の担当者は、必ず単一の管理者の指揮命令を受けるべき、とする原則。 指揮の統一 目的をもった組織は、1人の管理者の下、1つの計画の下に業務遂行すべき、とする原則。 個人利益の全体利益への従属 企業全体の利益は個人の利益よりも優先する 公正な従業員報酬 公正、合理的範囲内 集権 環境に応じ、許される限り(程度)において管理者に権限を集中すべき、とする原則。 階層組織 権限と階層の構築 秩序 適材適所の確保。 公正 従業員の安定 技能の習得には時間がかかるので、長い目で見守り、頻繁な人事異動は控えるべき、とする原則。 創意(イニシアティブ) 計画を立案し、実行すること。組織のすべての階層にその自由を与えることで、士気を高める。 従業員の団結 ただし、これらの原則は絶対的なものではなく、すべて程度問題であり、事態や人間、その他の変化・変動要因を考慮するべき、との注意も残している。 ファヨール死後の1929年に、『産業ならびに一般の管理』はアメリカで翻訳・出版されて高い評価を受け、管理過程論が生まれた。何より、管理を計画、組織、指揮、調整、統制の5要素と定義し、また管理教育の重要性を主張し、管理原則の理論化を試みた功績は大きく、経営管理論の始祖の一人に数えられる。 これらの原則は実務体験に基づくものであり説得力がある反面、経験論に過ぎず、管理の本質的な認識を欠いているとか、管理原則の適用されるべき条件(経営環境)の分析が不十分などの批判もある。また、管理過程論者はファヨールの意見に普遍的妥当性を見出すがあまり、経営環境変化に対応できなかった。ハーバート・サイモンは、「矛盾した経験則の寄せ集め」と批判している。
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