パッシブ・リアホイール・ステアリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 03:46 UTC 版)
「前輪駆動」の記事における「パッシブ・リアホイール・ステアリング」の解説
詳細は「四輪操舵#パッシブステア」および「en:Steering#Passive rear wheel steering」を参照 前輪駆動の登場当初からトルクステアやタックインの運転特性は問題視されていたが、フロントに比べてリアのサスペンションの設計が軽視されがちであったことも、前輪駆動の運転特性の問題を更に複雑なものとしていた。初期の前輪駆動車の後輪に採用例が多かった車軸懸架やトレーリングアーム式サスペンションは、高速旋回中にアクセルを抜かずにステアリングの舵角を増し続けると、後車軸が受動的にトー・アウト側に向いてスピンを誘発するリバース・ステアを引き起こしやすく、リバース・ステアとタックインの双方の特性で、初期の前輪駆動車は非常に癖の強い運転特性をドライバーに強いることとなった。リバース・ステアはコンプライアンスステアの一種であり、ワットリンク(英語版)等のリンク式サスペンションや、セミトレーリングアーム式サスペンションを採用する後輪駆動車でも既知の問題であった。 この問題が抜本的に解決に向かっていく嚆矢となったのは、1980年のBD型マツダ・ファミリアに採用されたセルフ・スタビライジング・サスペンション(SSサスペンション)の登場であった。SSサスペンションは台形のリンクアームが用いられたストラット式サスペンションであり、旋回時や制動時に後輪をトー・イン側に積極的に変化させる特性が持たせられ、それまでの前輪駆動車につきものだったタックインやリバース・ステアを大幅に抑え込むことに成功した。このような受動的な後輪操舵はパッシブ・リアホイール・ステアリング (PRS) と呼ばれており、BD型ファミリア以前にはイギリス・フォードの1966年式フォード・ゼファー(英語版)マークIVや、1978年のポルシェ・928で採用されたヴァイザッハ・アクスル(英語版)が知られていたが、SSサスペンション以降、前輪駆動車を開発する他メーカーでもトーションビーム式サスペンション等へのPRSの概念の導入や、トレーリングアームにおけるロール・センター(英語版)やアームの二面角の研究が進んでいき、前輪駆動車の運転特性の改善とその普及に大きく貢献した。 1980年代中期には、後輪を能動的に操舵するアクティブ4WSによって、前輪駆動車の更なる運動性の向上が模索された。1983年、マツダはコンセプトカーの「MX-02」で低速時に逆位相側のみに操舵する電動式4WSを発表、1987年に油圧式パワーステアリングと連動して電子制御される電動式4WSとして、GD/GV型マツダ・カペラに搭載された。同年、ホンダがBA5型ホンダ・プレリュードにて前輪と後輪の操舵機構が機械的に完全連動した機械式4WSを採用。三菱やトヨタは4WSにアクティブサスペンションを組み合わせ、タックインを機構的に抑止する技術的な試みを行ったが、これらのアクティブ4WSは本質的に高価で複雑な機構であった事もあり、2000年代までにはおおむね採用する車種は無くなった。 また、軽自動車で唯一機械式4WSを採用したL220S型ダイハツ・ミラは、小回りが良すぎる故に車庫入れが却ってやりづらいという問題も浮上し、消費者の間で広くは受け入れられなかった。 なお、いすゞ自動車は1991年にニシボリック・サスペンションによって、可動角度を大きくしたPRSのメカニズムで「アクティブ4WS+アクティブサス」が目指した後輪操舵の再現を狙ったが、機構の熟成不足もあり商業的にも失敗に終わっている。
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