バージョンと実際の使用例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 02:46 UTC 版)
「Intel i860」の記事における「バージョンと実際の使用例」の解説
このチップにはふたつのバージョンがあった。コードネームN10のXRとコードネームN11のXPである。XPには大きなキャッシュ、二次キャッシュ、より高速なバスと、並列計算のためのバススヌーピング機能とキャッシュ・コンシステンシ機能を持っていた。XRは25 MHzか40 MHzであったが、XPはプロセスを縮小したため(1 μm→0.8 μm)40 MHzか50 MHzで動作。どちらも同じ命令セットが動作する。 まず、i860はロスアラモス国立研究所のiPSC/860(英語版)のようないくつかの大規模マシンで使われた。コンパイラが強化されたためi860の性能もそれなりに強化されたが、当時のi860の性能は他のRISCには及ばなかった。他には、i860XRを28個またはi860XPを14個搭載したアライアント・コンピュータのFX/2800シリーズがある。 インテルはi860をワークステーションのCPUとして使えないか、MIPSアーキテクチャのチップなどと対抗できないか試したことがある。マイクロソフトは内部で設計したi860ベースのワークステーション(コードネームは Dazzle)で後に Windows NT と呼ばれるようになるOSの開発を行っていたが、最終的に NT が実際に動作したのはMIPSと Intel 386 で、その後他のプロセッサにも移植されたが i860 には移植されなかった。NTという名称は、i860XR のコード名が "N-Ten" だったことに由来するとも言われている。 i860をメインCPUとして持つUNIXワークステーションも存在し、沖電気のOKI station 7300と、それをベースにグラフィックスサブシステムに2個のi860を搭載したクボタコンピュータの Titan VISTRA がある。 i860はワークステーション市場でグラフィックスアクセラレータとして使われたりした。例えばNeXTDimensionでも使われた。このマシンはMachの機能削減版が動作し、完全なPostScriptスタックを実装していた。ただし、PostScript部分が完全に仕上げられることはなく、単に色ピクセルを動かすぐらいしかできなかった。このような環境ではi860はかなりよく動作した。主なプログラムはキャッシュに収まるサイズで、完全に予測通りに動くようにコーディングできたからである。Truevision(英語版)は同社のフレームバッファカード Targa と Vista と共に使うことを意図したi860ベースのアクセラレータカードを作り、ピクサーがそれを使って動作するバージョンのRenderManを開発。これは386ホストの4倍の性能を発揮した。他の採用例は、ジオメトリエンジン内に複数個のi860XPを使った SGI RealityEngine(英語版) がある。SPARCstation330/470などのデスクサイド型のVMEスロットに装備するVX/MVXグラフィックスアクセラレータには40MHzの i860 が搭載された(VXには1個、MVXには4個)。このような使用法も徐々に減っていき、多くの汎用CPUがi860の性能に追いついて、インテルもPentiumを主力とするようになった。 Mercury Computer Systems(英語版) はi860を並列計算機に採用した。ファットツリー(英語版)型ネットワークで2個から360個の計算ノードを相互接続したもので、各ノードのローカルメモリに他ノードからもアクセスできる。ノード毎に異なるシステムを採用でき、i860の他にPowerPCや SHARC DSP を3個組合わせたノードがある。i860向けにアセンブリ言語で書かれた信号処理ライブラリを提供したため、よい性能が得られた。19インチラック 9U の筐体に360個の計算ノードを詰め込めるため、軍用機上でのレーダー処理などに適していた。 また1990年代前半、ストラタスがi860ベースの無停止コンピュータ XA/R シリーズを開発している。 1990年代後半、インテルはARMベースのXScaleでRISCビジネス全体を置き換えた。また、インテルのXeonシステム用のマザーボードのチップセットとしてi860という名前が再利用されているため混乱を招くこともある。
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