ナチズムとカエサル主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 23:53 UTC 版)
「オスヴァルト・シュペングラー」の記事における「ナチズムとカエサル主義」の解説
また、『西洋の没落』第2巻(1922)では農民と封建貴族の住む農村が血と伝統と生産の世界であり魂・感性・本能の領域に存すると称賛し、これに対して都市は貨幣と知性による寄生的世界とした。またシュペングラーは「貨幣こそ知能を王座にのぼらせるものである」とし、民主主義は貨幣と政治権力の同等化の完成品であるとする。ギリシャ・ローマの貨幣思考は、すべての都市を鋳貨に、すべての民衆を奴隷に変え、ファウスト的な貨幣思考は自然の資源を開発して金融エネルギーに変える。貨幣は破壊的で生を否定する力であるのに対して、戦争は偉大な事柄の創造者であり、軍隊と家族は貨幣関係の影響を受けない。都市の商人は、ゴシック時代の西洋のユダヤ人、ビザンツ人、ペルシア人、アルメニア人のような異邦人であり、商人や仲買人などの都市住民はドイツの特殊性を消滅させる。しかし、国民的な「血の共同体」による社会主義は、貨幣とその政治的武器である民主主義の独裁を打ち破り、「貨幣は、血によってのみ克服され、支配されうる」とされ、国民社会主義は資本主義に勝利するとされる。 現代のような巨大戦の時代には、ナポレオン主義から皇帝主義(カエサル主義)へ推移していくとされる。カエサル主義は憲法的法式化のいかんを問わず、内部的本質において無形式となった政府のことをいい、カエサルが行使する個人的権力だけが意味を有し、知能と貨幣による政治が終末を迎える。そして血の力、生命の本源的衝動、絶えることのない肉体的力が古い支配を再開する。政治家は一つの伝統を創造し、統一的活動の流れを解放することで、ギリシア・ローマ世界が神と呼んだかもしれない何者かになり、若い人種の精神的祖先となる。「カエサル主義の到来は貨幣の、そしてその政治的武器であるデモクラシーの独裁を打ち壊す」のであり、都市的な経済よりも政治化された生命の方が強いとされた。 シュペングラーは国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)員ではなかったが、抽象的な資本と商業のよそよそしい世界をユダヤ人にみるような世界観を提供してナチスを生み出したドイツの知的風土に強い影響を与えた。一方で生物学的な反ユダヤ主義には反対していた。
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