ナチズムにおける環境保護思想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/10 23:18 UTC 版)
「ナチズムと環境保護」の記事における「ナチズムにおける環境保護思想」の解説
1920年代からドイツにおいては環境保護思想が高まりつつあり、ナチ党(国家社会主義ドイツ労働者党)もそのような主張を行っていた。イェルク・ツィンク(ドイツ語版)やウルリヒ・リンゼ(ドイツ語版)は、ナチズムの環境保護思想を「血と土」のイデオロギーに基づくものと見ている。リヒャルト・ヴァルター・ダレが提唱した「血と土」イデオロギーは土地を重視するものであり、環境保護的な思想も含まれていた。 ナチ党の自然保護は自然回帰主義であり、近代化農法を非難し有機的な自作農業を賛美した。また、マルティン・ハイデガーなどナチ党に同調する哲学者たちも「自然と調和した生活」を熱烈に説き、その思想面を支持した。 第一次世界大戦後のアメリカ西海岸では、自然保護思想と人種差別的な優生学とが密接に結びつき、熱心な活動が行われていた。アドルフ・ヒトラーは、アメリカの自然保護主義者マディソン・グラント(英語版)の著した、北方人種の優越を主張する『偉大な人種の消滅 (The Passing of the Great Race)』に感銘を受け、同書を聖書に喩える熱烈なファンレターを送っている。 一方で、動物保護の思想にはいわゆる人間中心主義ではない、生命中心主義的な観点が見られる。ヘルマン・ゲーリングは「ドイツ人は常に動物への偉大な愛情を示してきた」「現在まで動物は法律において生命のないものであると考えられてきた。……このことはドイツの精神に適合しないし、何にもまして、ナチズムの理念とは完全にかけ離れている」と述べている。また後の動物保護法においても、動物は人間のためにではなく、それ自体のために保護されると定義されている。 これには反ユダヤ主義との関連もあり、1890年代以降にはユダヤ人が行っていた「カシュルート」に反しない屠殺法を禁止するよう求める動きがしばしば保守派から求められていた。ユダヤ教においては「血を食べてはならない」という戒律があったため、動物が生きているうちに気絶させず、一気に首を切り落とす方法が行われていたが、保守派はこれを動物に苦痛を与えるものだとして反対していた。後の「動物の屠殺に関する法律」の成立には、ユダヤ人を犯罪者とする、反ユダヤ主義的な目的も含まれていたと見られている。
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