ナチズムのユダヤ人観
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 02:49 UTC 版)
「ホロコースト」の記事における「ナチズムのユダヤ人観」の解説
第一次世界大戦時、ドイツ帝国においては中央協会などのユダヤ人団体もドイツ政府に協力したが、反ユダヤ主義者たちによってユダヤ人が戦争に非協力的というプロパガンダが行われた。ドイツ帝国軍はこれを承けて軍部内ユダヤ人の統計を取り、反ユダヤ主義者の言い分が正当であると証明しようとしたが、結果はその逆であったために公表されなかった。ドイツが敗北すると、敗戦はユダヤ人や社会主義者による「背後からの一突き」が原因という見方が広まった。こうしたドイツの風潮の中で生まれたのが国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)である。 ナチ党は創設時から反セム主義としての反ユダヤ主義を唱えていた。ヒトラーの著書『我が闘争』では「ユダヤ人問題の認識と解決なしには、ドイツ民族体再興の企ては無意味であり、不可能である」と書かれている。ヒトラーは入党前に記した最初の政治的書簡で「ユダヤ人とは即ち、無条件に人種であり、決して宗教団体などではない」と認識していた。 ナチズムではユダヤ人は、「すべての反ドイツ的なものの創造者」であるとされた。つまり第一次世界大戦の張本人であり、民主主義、議会主義、マルクス主義、ボルシェヴィズム、自由主義、平等主義などを生み出し、ドイツに敵対する国家の背後で糸を引きながら、ドイツ人を含むすべての民族の破滅を狙っているとされた。世界支配の権利を持っているのは疑いなくドイツ民族であるが、その最大の障害がユダヤ人であり、「アーリア人の勝利か、しからずんばその絶滅とユダヤ人の勝利か」の二つの可能性しかあり得ないとしていた。 また、ナチズムは、ドイツ民族の血によって結びつけられる「民族共同体」が自らの存立する世界観であると定義しており、ナチズム人種学では、ハンス・ギュンターらの提唱する、白人、中でも北方人種の要素を多く持つ民族が優れた民族であると考えられていた。ナチズムにおいてはドイツ民族の血統改良(ドイツ語: Aufartung)が重要とされ、北方人種化(ドイツ語: Aufnordung)の一方、遺伝病や精神病などの「質的欠格者」や、「劣等人種」との混血を回避する必要があるとされた。 ヒトラーは演説でこう述べている。「我々の社会は危機に瀕している。徒に弱者や病気の者に助けの手を差し伸べて、適者生存の原理に背いてしまったためだ。」この考えに基づいて推進された政策の一つが、身体障害者や精神障害者の断種や、「生きるに値しない命」 (Lebensunwertes Leben) と見られた成人障害者を安楽死させるT4作戦であった。T4作戦で安楽死を担当した技術者たちは、のちに絶滅収容所でその技術を用いることになる。
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