スペースデブリ
破片を意味するデブリは宇宙空間で制御不能になった人工物体
「デブリ」というのは、本来は「破片」を意味する言葉です。1957年の人工衛星スプートニク1号以来、人類はこれまでに約5,000個の人工衛星を打ち上げてきました。このうち、運用を停止した衛星など、宇宙空間で制御不能になり、そのまま軌道上を回り続けている人工物体のことを「スペースデブリ」と呼びます(単に「デブリ」ともいいます)。地球のまわりの宇宙空間には、使い終えた衛星本体はもとより、ロケットや衛星がこわれて生じた破片や塗料のかけら、宇宙飛行士が落とした手袋など、さまざまな人工物体が飛び交っています。
衛星との衝突事故などで宇宙の新しい環境問題に
宇宙を漂う人工物体との衝突は、その速度が秒速数kmと高速であるため、地上での衝突と比べると桁ちがいに危険です。1996年、日本の若田光一宇宙飛行士が乗り込んだスペースシャトル・エンデバー号は、打ち上げの際、アメリカの小さな軍事衛星と衝突する可能性があることがわかったため、打ち上げを5分延期しました。また、このミッション(STS-72)で若田宇宙飛行士が回収した日本の宇宙実験室(SFU)には、500個近い衝突痕が残っていました。同じ年の7月には、フランスの小型衛星シリーズがスーツケース大のデブリと衝突し、本体の一部がもぎとられるという事故も起きました。そのため最近では、この問題を宇宙の新しい環境問題としてとらえる動きが広がっています。
観測されたスペースデブリは最近の統計で9,000件近く
スペースデブリは、いったいどのぐらいの数があるのでしょうか。いまのところ正確な数値はわかりませんが、アメリカの機関がまとめた統計によると、1998年末現在、軌道上で観測できたものだけでも9,000件近い人工物体が浮かんでいるようです。そのうちもっとも多いのは破片で、全体の半数近くを占めており、他は、機能しなくなった古い衛星やロケットの上段などです。デブリは、軌道を外れて大気圏に突入すると燃え尽きてしまいますし、太陽の活動が活発になる時期には地球の大気層が膨張するため、やはり落下が促進され、数は減少します。
処理能力以上のゴミを出さないのが最良の解決策
1998年から建設がはじまる国際宇宙ステーションにとっても、デブリは大きな脅威となります。スペースシャトルと同様、直径10cm以上の大型デブリと衝突が予測される場合には、あらかじめ軌道を変更するなどの措置がとられます。
また、基本的なデブリ対策としては、地上のゴミと同じく、自然の処理能力以上のゴミを出さないようにするのが最良の解決策であり、(1)使い残した燃料を出しきって、ロケットや衛星の爆発を防ぎ、破片をまき散らさないこと、(2)部品類を捨てないこと、(3)運用が終了した衛星は、できるだけ早く大気圏に突入させるか、もしくは運用中の衛星のじゃまにならないよう高度が300km以上離れた軌道に移動させる、といった対策がとられています。
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