シンナー中毒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 01:05 UTC 版)
日本では、シンナー蒸気吸引が1967年(昭和42年)頃から青少年の間に「シンナー遊び」として流行。1970年(昭和45年)6月には警視庁が都下の乱用グループを一斉摘発し、104人を補導したこともあった。政府は社会問題化したことを受けて毒物及び劇物取締法の一部改定に着手。1972年(昭和47年)8月1日より使用、販売等が規制されている。このことにより日本の法律ではシンナーに含まれる成分であるトルエン・キシレン・メタノール・酢酸エチル・メチルエチルケトンが劇物として指定され、これらを含む製剤の吸引や吸引目的の所持等を禁止するとともに、違反を行った者の取締りが行われるようになった。 また、シンナー遊びにおいてシンナーを詰めた袋のこと、もしくはシンナー遊びそのものを俗に「アンパン」、関西地方ではチャンソリ、トルエンそのものを純トロという。袋からシンナーを吸う様子があんパンを食べるさまに似ていることからである。法規や各自治体の条例が厳しくなり、塗料販売店から簡単にシンナーを購入できなくなったため、管理のゆるい小規模な化学製品工場の資材置場からトルエンやアセトンの缶を盗んで吸引するといった非行例が見られた。 シンナー遊びは10代の成長期(思春期)においても多く行われる。その多くは、友達や先輩などからの誘いや売人からの売買で手に入れる場合が多い。シンナーを吸引すると最初は強い多幸感をもたらし、日常生活のさりげない行動が楽しく感じられるといわれる。その後は急激に副作用が強まり、全身の筋肉の劣化、成長期における骨(軟化し脆くなる)や生殖器への障害などが見え始め、ついには「自分が殺されそうだ」という妄想や「電波があいつを殺せといったんだ」というような幻聴、そして「だれか自分を見張っている」などの幻覚症状などが発生する。それでも、副作用から逃れるためや一時の快感を求めて再びシンナーを吸引し、最終的には意識不明の重体や死亡に至る場合もある。また、揮発性と引火性の高い液体であるため、酩酊した状態でタバコを吸おうとして引火し焼死する事故も起きている。 シンナーの乱用は2010年代後半から激減。毒物及び劇物取締法違反で検挙補導された少年の数がワースト1を記録し続けてきた福岡県においても、年間1人もしくは0人となる年が増えた。
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