カーミラとの再会
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/09 04:30 UTC 版)
それからしばらく経ったある夏の日から話は始まる。近所に住み親交のあるスピエルドルフ将軍からローラの父へ手紙が届くが、その内容はローラが友になるべく心待ちにしていた、将軍の姪が死亡したことを告げるものだった。将軍は姪をわが子のように溺愛しており、その死に関する経過と結果から取り乱している様子で、それに加えて怪物を捜索し退治するという要領を得ない決意が書かれていた。 心待ちにしていた未だ見ぬ少女の死と将軍の乱心に対し、城の前でローラが考えを巡らせていると、突然暴走した馬車がやってくる。馬車は菩提樹の木にぶつかり横転し、中から気絶した美しい少女が運び出される。馬車に同乗していた少女の母を称する貴族然とした美しい女性は、急ぎの旅の途中であるため倒れた少女をどこかへ預けたいと言い出す。しかし城に近い人里には宿がなく、またローラが寂しさを紛らわす相手を欲っしたため、少女をローラの住む城で預かることになる。そして少女の母はローラの父に、少女は体が弱いことと神経質であることを告げ、3か月後に再び娘を迎えに来ると約束し、自分たちの素性を探らないよう念を押して去ってゆく。 気絶していた少女は城へ運ばれると間もなく目を覚まし、無事を確認したローラは真っ先に少女に会いに行く。しかしその少女と面と向かったローラは、少女がかつて夜中に現れた女性と瓜二つであることに驚く。驚きで声を失ったローラに対し、少女は「12年前に夢の中で会ってからその顔を忘れたことはなかった」と言い、ローラも「12年前に夢の中でも現実でも会ってからその顔を忘れたことはなかった」と返す。少女は夢の中で会っただけだと、ローラの記憶とは相反する発言をするが、ローラはたちまち少女に魅了され、それまでの疑問や反発はどこかへいってしまう。 その日からローラは少女と共に生活をするようになる。ローラが強く惚れ込んだ少女であったが、彼女にはいくつかの不可解な点があった。 寝る時は部屋に鍵をかけ、部屋に他人が居たまま寝ることを拒絶する。 ローラの父が少女の母から念を押された通り、体が弱く神経質で、素性は家柄が良いことと名をカーミラということ以外、決して明かさない。 度々ローラに愛撫のような過剰なスキンシップをしながら愛を語るが、その文言は生死に関わるものばかりである。 起きてくるのは毎日正午を過ぎた昼日中で、食事はただチョコレートを1杯飲むだけ。 葬列に伴う賛美歌に異常な嫌悪感を表し、気絶しないようにするのが精一杯な様子で体を震わせる。 城へ来た旅芸人から錐や針に例えられるほど、異常に鋭く細長い犬歯をしている。 またカーミラが現れてからというもの、城周辺の村では数々の異変が起きる。城の近くに住む何人もの女性が、幽霊を見たと言い残すと体調を崩して相次いで死亡し、熱病の流行が噂されるようになったのだ。そしてカーミラの部屋に面した窓の下には、夜中に幽霊が現れるという噂も流れる。また、煤などで汚れてそれまでは見ることが出来なかったローラの母方の一族の肖像画の一枚が、1世紀以上前に死んだカルンスタイン伯爵夫人マーカラの肖像画であり、さらに夫人はカーミラと瓜二つで、ほくろの位置まで一致していた。 その晩、ローラは夢の中で黒猫のような動物に襲われ、胸を2本の針を刺されたような鋭い痛みを覚えて飛び起きる。すると部屋の中には黒い服を着た女がおり、恐怖で動けないローラの前からゆっくりと移動し、ドアを開けて出てゆく。しかし、すぐにドアの鍵を調べても鍵は寝る時同様にかかったままで、ローラは言い知れない恐怖を感じる。そして、この晩以降、ローラは毎朝目を覚ますたびに、だるいような体の不調を覚え、徐々に体調が悪化してゆくことになる。
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