カーミラの長い眠り
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ヤングジャンプ1979年3号に掲載。 嵐の夜に娘が投身自殺を行った。城下のファニュの村を訪れていた医師と看護師ジョルジアが呼ばれたが、治療のかいなく、その娘カーミラ・カルンシュタインは息を引き取った。 半年後、ジョルジアはカーミラの母親であるカルンシュタイン夫人から、お礼かたがた招待の手紙を受け取り、城を訪問した。訪問を喜ぶカルンシュタイン夫人と共に2人きりの晩餐の席で亡きカーミラを偲び、翌日にカーミラの墓参りを約束する。晩餐を終え、夫人に客用寝室へと案内されるジョルジアは廊下の物陰に佇むカーミラの姿に驚く。それはカルンシュタイン家に伝わる古いミラルカ・カルンシュタイン夫人の肖像画で、カーミラにそっくりに描かれていた。 翌日、ジョルジアとカルンシュタイン夫人は墓地を訪れた。その時、村人たちが墓地へと押し寄せてきた。カーミラの死後、村で変死をする娘が続出している、昨夜も若い恋人が何者かに襲われ、男は喉を喰い破られ、娘は全身の血を抜かれて殺されたのだと。村人たちの先頭に立っていた若い牧師は「カーミラが吸血鬼として蘇った」と宣言するのだった。牧師らは墓を掘り返し、カーミラが納められている棺の蓋を開ける。そこには半年前と変わらず腐敗もせずに眠るがごとく美貌を保ったままのカーミラの姿があった。そして、カーミラの手がジョルジアの手首を掴んだ。 カーミラが仮死状態であったと判断したジョルジアはカーミラを城へと運ばせた。若い牧師は、カーミラは吸血鬼であり滅ぼさねばならないと言い張る。ファニュの村は数百年前にも吸血鬼ミラルカの犠牲者を出しており「ミラルカを見つけたら殺せ」と代々の牧師に受け継がれているのだと。そして、若い牧師はカルンシュタイン夫人に、このカーミラは夫人の実の娘ではないことを問いただす。しかし、夫人はたとえ吸血鬼であってもこの娘を牧師たちに渡しはしないと強硬に反抗する。ジョルジアの取り成しもあり、牧師もとりあえずは引き上げることにした。 その夜、ジョルジアは、血の海に溺れ、女性に追われて血を吸われる悪夢を見る。目覚めたジョルジアの首筋には確かに小さな鋭い牙の痕ができ、出血をしていた。ジョルジアが警護に呼んであった警官と若い牧師も再び城へとやって来て、ジョルジアの首の包帯を見てカーミラの新たな犠牲者ではないかと警告をする。吸血鬼は特に気に入った娘は一気に殺さず、少しずつ血を吸って自分のものにするのだと。カーミラの寝顔を見ながらジョルジアは、自ら仮死状態になり代謝を抑え、時々血を吸って生き続ける事が可能ならば若く美しいままで永遠に生き続けられるのではないかと思いつく。女性としての嫉妬も加わり、ジョルジアはカーミラを目覚めさせるための処置を行うことを決意し、夫人に許可を求める。まだ数人しか成功例がないが、昏睡状態の患者から自身の血液を抜き取り、それを頸動脈に流し込む。そのショックで昏睡から覚めさせると。 処置の邪魔になるからと、牧師は警官に伴われて退席させられた。ジョルジアはカーミラの腕から採血し、その血をそのまま頸動脈に注射する。それは永遠の若さを保つ美女をただの女に引き戻す行為でもあった。頸動脈への注射にカーミラの身体が痙攣をはじめ、閉じたまぶたから涙を流れだす。一方、古いミラルカの肖像画を見た牧師は、やはりカーミラが永遠の時を生きる吸血鬼であったと判断し、警官を振り切ってカーミラの部屋へと駆け戻る。 カーミラのまぶたが開き、夫人が「目覚めた」と叫ぶと同時に木製のステッキを手に飛び込んできた牧師がカーミラの心臓にステッキを突き立て、鮮血が吹き上がった。その直前に、ジョルジアはカーミラの首筋にも自分と同じ牙の痕がついていたことを見て取る。カーミラはそのまま即死したが、伝承と違ってその遺体はチリとなって消える事もなかった。茫然とする牧師は、遅れて戻ってきた警官に殺人の現行犯として逮捕された。 ジョルジアの背後に、カルンシュタイン夫人が忍び寄り囁く。今度は、ジョルジアが新しいカーミラになるのだと。 廊下の肖像画が落ち、そこには夫人と同じ顔の肖像画があった。
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