カマラルザマーンとあらゆる月のうち最もうるわしい月ブドゥール姫との物語(第170夜 - 第236夜)
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「カマラルザマーンとあらゆる月のうち最もうるわしい月ブドゥール姫との物語(第170夜 - 第236夜)」の解説
バートン版「カマル・アル・ザマンの物語(第170夜‐第249夜)」 東洋文庫版「カマル・ウッ・ザマーンの物語(第170夜‐第249夜)」 ハーレダーンという国の国王シャハラマーンには美しい一人息子の王子カマラルザマーンがいたが、15歳になっても女性に興味が無く、結婚を拒否していた。一方、遥か遠くのエル・ブフールとエル・クスールの国王ガイウールには美しい一人娘の王女ブドゥールがいたが、男性に興味が無く、近隣の王子の求婚を断り続けていた。 ある日、ハーレダーンの国王は結婚を拒否し続けるカマラルザマーンを懲らしめるため、古い塔に閉じ込めた。その塔は古代ローマの塔で、その塔の井戸には魔王ドムリアットの娘の女鬼神(イフリータ)マイムーナが住んでいて、夜カマラルザマーンが眠った後、彼を見て美しさに感動した。そこに鬼神シャムフラシュの息子ダハナシュが現れ、カマラルザマーンよりブドゥール姫の方が美しいと言ったため、言い争いになり、ブドゥール姫を連れて来て見比べることになった。 鬼神ダナハシュが空を飛び眠っているブドゥール姫を連れて来てカマラルザマーンの隣に寝かせると、2人は同じ顔をしていて、優劣がつかなかった。そこで、魔王アブー・ハンファシュの子孫の鬼神ハシュカシュ・ベン・ファフラシュ・ベン・アトラシュに仲裁を求めたところ、片方を起こし、より相手に惚れた方を負けとすることになった。まず、カマラルザマーンを起こしたところ、寝ているブドゥール姫をたちまち好きになるが、父王シャハラマーンの計略と思い、指輪を交換したのみで一線を越えず朝まで我慢することにした。次にブドゥール姫を起こしたところ、寝ているカマラルザマーンをたちまち好きになり、処女を捧げた。勝負はカマラルザマーンの勝ちとなった。鬼神ダハナシュはブドゥール姫を寝かせガイウール王の宮殿に連れ帰った。翌朝、カマラルザマーンとブドゥール姫は、指輪と処女の血のため夢ではないと知り、それぞれの国で相手を探すが、誰も知らないため、狂人扱いされた。 ガイウール王は「ブドゥール姫の狂気を治した者は結婚を許し国王にする。しかし、治せなかった者は姫を見た以上殺す。」とお触れを出したが、誰も治せなかった。ブドゥール姫の乳母の息子マルザワーンは事情を知り、姫の恋人を探す旅に出た。1か月の旅の後、タラーフという町に着くと、カマラルザマーン王子の不思議な話の噂を聞き、陸路で6か月か、海路で1か月のところにあるハーレダーン国に王子がいることを知り、海路で旅立った。船は難破したがハーレダーン国に着き、カマラルザマーン王子にブドゥール姫の国を知らせた。カマラルザマーン王子は旅立ち、無事ブドゥール姫と再会し、二人はすぐさま結婚した。 結婚後しばらくして、カマラルザマーンは残して来た父王が気がかりになり、ブドゥール姫を連れてハーレダーンに帰ることにした。旅のテントの中で寝ているブドゥール姫の体を触っていると、体の中に紅瑪瑙の魔法のお守りがあるのを見つけたが、それを鳥に取られてしまった。カマラルザマーンは一人、取り返すために鳥を追いかけるが、11日追いかけて、ある港町で鳥を見失ってしまった。その町はキリスト教徒に征服された町で、イスラム教徒は庭師一人しかいなかった。カマラルザマーンは帰る道が分からず、港にイスラムの船が来るまで庭師の手伝いをして待ち続けた。 一方、ブドゥール姫はカマラルザマーンが消えたことと紅瑪瑙のお守りがなくなったことを知り悲しんだが、従者の反乱を恐れ、顔がカマラルザマーンと同じことを利用し、男装してカマラルザマーンを演じ、側近の女奴隷にベールをさせてブドゥール姫を演じさせ、旅を続け黒檀の島に着いた。黒檀の島の国王アルマノスと会った男装のブドゥール姫は、国王に気に入られ、国王の美しい一人娘のハイヤート・アルヌフース姫との結婚を申し込まれ承諾した。ブドゥール姫はハイヤート・アルヌフース姫に自分が女であることを打ち明け、秘密を守ることを約束させ、鳥の血を処女の血と偽り、アルマノス王を騙した。アルマノス王は喜び、王位をブドゥール姫に譲った。 カマラルザマーンは、いつまでも来ないイスラムの船を待ち続けた。ある日、鳥同士が戦うのを見つけ、死んだ方の鳥を見ると、あの紅瑪瑙のお守りが見つかった。そして、庭仕事をしていると地中に埋もれた階段を見つけ、その階段を降りると20個の金の詰まった甕を見つけたので、庭師と折半することにした。その日、黒檀の島へ行くイスラムの船が入港したのを知り、甕の上の方にオリーブを詰め、オリーブの甕として船に載せた。紅瑪瑙は甕の一つの底に隠し、その甕にはカマラルザマーンと名前を彫った。しかし、庭師が急死したため、船の出港に間に合わなくなってしまった。 船は黒檀の島に入港し、男装のブドゥール姫は好物のオリーブの甕を全て買った。甕に紅瑪瑙とカマラルザマーンの名前を見たブドゥール姫は、急いで船長にカマラルザマーンを連れて来るよう命じ、船長はキリスト教徒の町からカマラルザマーンを連れ帰った。カマラルザマーンは、男装のブドゥール姫に気付かず戸惑うが、ついに気付き、ブドゥール姫を第1の正妻、ハイヤート・アルヌフース姫を第2の正妻とし、また父王シャハラマーンにも自分の無事を伝え、幸せに暮らした。 類似の話:大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンとハサン・パドレディンの物語 類似の話:美しきズームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語
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