イメージングとデジタル化
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「アルキメデス・パリンプセスト」の記事における「イメージングとデジタル化」の解説
ボルチモアにあるウォルターズ美術館で、1999年から2008年の間、大規模なイメージング調査と保存が行われた(Sirieixの地下室にあったため、カビによりひどく傷んでいた)。これはウォルターズ美術館の写本の学芸員Dr. Will Noelの指揮の下、R.B. Toth AssociatesのMichael B. Tothが管理を行い、Dr. Abigail Quandtが写本の保存を担当した。 ロチェスター工科大学のDr. Roger L. Easton, Jr. やEquipoise ImagingのDr. William A. Christens-Barry、Dr. Keith Knox(当時ボーイングLTSに勤務。現在は米国空軍研究所を退職)などからなるイメージング科学者のチームは、紫外線、可視光線、赤外線の波長含む様々なスペクトル帯のデジタル画像をコンピュータ処理し、アルキメデス含む下に書かれているテキストのほとんどを明らかにした。2006年までに3つのスペクトル帯でパリンプセスト全体のイメージングとデジタル化をしたのち、2007年に12のスペクトル帯+レーキングライトでパリンプセスト全体のイメージングを行った(紫外線: 365nm、可視光線: 445, 470, 505, 530, 570, 617, 625nm、赤外線: 700, 735, 870nm、レーキングライト: 910, 470nm)。チームは、これらの画像をデジタル処理して、擬似カラーを用いて下に書かれているテキストをより明らかにした。また、彼らはHeibergにより撮影された画像もデジタル化した。スタンフォード大学のDr. Reviel NetzとNigel Wilsonは、これらの画像を使いギャップを埋め、原文通りのテキストの転写を作成した。 1938年以降のどこかで、高く売るためにビザンティン様式の宗教的な絵を4枚写本の中に加えられ、これらの絵によりその下にあるテキストは永久に判読することができないと思われた。しかし、2005年5月、Dr. Uwe BergmanとDr. Bob Mortonにより、カリフォルニア州メンロパークにあるSLAC国立加速器研究所で作られた高収束のX線が、174ページのテキストのうち、まだ明らかになっていない部分の解読を始めるために使われた。蛍光X線の生成についてSSRLのディレクターKeith Hodgsonは、「シンクロトロン光は、光速に近い速度で移動する電子がストレージリングの周りの曲がった経路を進んだ時に生成される。赤外線の波長を介してX線の電磁光を放出する。結果として得られる光ビームは、多くの種類の物質の複雑な構造と有用性を明らかにするのに理想的な特性を持っているが、今回はあらゆる科学の創始者の1人のこれまで隠されていた業績を明らかにする」と述べている。 2007年4月、アリストテレスの『範疇論』の注釈書である約9,000語に及ぶ新たなテキストがこのパリンプセストから発見されたことが発表された。このテキストの大部分は、2009年初頭に紫外線照射による蛍光灯の3つの色帯(赤、緑、青)に主成分分析を適用することで復元された。Dr. Will Noelはインタビューにおいて「あなたは1つのパリンプセストを叩くのは金であり、2つのパリンプセストを叩くのは全く驚くべきことである。しかしそのときさらに驚くべきことが起こった」と発言している。これは紀元前4世紀のアテネの政治家ヒペレイデスのテキストが以前に発見されていることに言及したものであり、これもまたパリンプセスト内に発見されている。これは彼の演説Against Diondasであり、2008年にドイツの学術雑誌Zeitschrift für Papyrologie und Epigraphik, vol. 165に掲載され、学術ジャーナルに掲載された初のパリンプセストからの新しいテキストとなった。 この本の転写には、Text Encoding Initiativeガイドラインを使用してデジタルにエンコードされ、画像と転写のメタデータには、Dublin Core Metadata Elementsに基づく識別情報と目録情報が含まれていた。メタデータとデータはEmery ITのDoug Emeryにより管理された。 2008年10月29日(パリンプセストがオークションで落札されてから10周年)、画像と転写含む全てのデータがクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもと、Digital Palimpsest Web Pageで無料で使用できるように提供され、パリンプセストを元のページ順に加工した画像がGoogle Bookとして掲載された。2011年下半期には、ウォルターズ美術館の展示"Lost and Found: The Secrets of Archimedes"の主題となった。2015年、デジタルデータの保存実験において、スイスの科学者たちがアルキメデス・パリンプセストのテキストをDNAにエンコードした。この解読により、アルキメデスが積分を発明した可能性があると提案する数学者もいる。
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