アンデス地域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 08:36 UTC 版)
アンデス文明の鐙型注口土器の変遷 チャビン文化(紀元前1000年頃) モチェ文化III期(4世紀) モチェ文化IV期(6世紀) チムー王国(14世紀〜15世紀) アンデスの山地と海岸部では紀元前3000年紀に定住化が進んだが、紀元前2000年紀に土器や機織りの技術がもたらされたことにより、人びとは本格的な農耕生活に入り、内陸部の谷合に拠点的な集落を営むようになった。この動きが特に顕著だったのがペルーの太平洋沿岸地方で、この地域ではまた巨大な祭祀と儀礼のための施設を伴う文化が急速に発展した。 こうして形成されたアンデス文明では、その長い歴史のなかで製作された土器の形態は多岐にわたっているが、中でも特徴的なものとして乗馬の際の鐙(あぶみ)に似た形の注口部の付いた壺類(鐙型注口土器)の存在がある。これは、ペルー北部を中心に、先古典期開始の紀元前18世紀頃からプレ・インカの全時期を通じて、チャビン文化やモチェ文化も含めチムー王国(850年〜1470年)の時代まで一貫してみられるものであり、基本的には型入れの技法によっててきた。 先古典文化前半の土器は、黒・褐色・赤色を呈した光沢のある表面が特徴的で、鐙形注口壺のほか長頸壺や平底の浅鉢などの器種があり、胴部に人物の頭部や動植物の象形装飾、刻線模様などを施すなどの共通点がある。人物や動植物の装飾はそれ以降もプレ・インカの大きな特徴となっており、神話や宗教儀礼と密接な関連をもつと思われる題材が数多く描かれている。特異な技法としては、焼成後に顔料を施して着色する土器があり、ペルー南海岸では樹脂を混入させた顔料で塗彩する土器がつくられた。 15世紀にアンデス全域を統合したインカ帝国(1438年〜1532年)では、器種が大幅に減少し、文様も具象的なものが激減して幾何学的な内容のものが増えていった。 チャビン文化(紀元前10世紀) 坏 チャビン文化 蓋付容器 チャビン文化 鐙型注口土器 ナスカ文化(紀元前後〜4世紀) 双注口土器 ナスカ文化 シャチ形注口土器 ナスカ文化(400年 1000年)鳥形注口土器 ティワナク文化 深鉢 モチェ文化III期(4世紀) 魚文 鐙型注口土器 モチェ文化III期(4世紀) カエル形 鐙型注口土器 モチェ文化IV期(6世紀) フクロウ形 鐙型注口土器 ワリ文化(500年頃〜900年頃)人物立像文 蓋付瓶形土器 チムー王国 二連注口土器 チムー王国 双注口土器 インカ帝国(15〜16世紀)鳥頭装飾付皿 インカ帝国 獣頭装飾付深鉢 インカ帝国(1430年頃〜1532年頃)彩文土器 把手付壺 インカ帝国(1450年頃〜1550年頃)人面付横瓶 インカ帝国(1450年頃〜1550年頃)人物・野菜複合形土製品 インカ帝国(15世紀〜16世紀)人足形容器 インカ帝国滅亡期(16〜17世紀)深鉢形土器
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