アンデス文明と現代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 07:14 UTC 版)
新大陸の諸文明や諸文化は、メソアメリカ文明や北米先住民の諸文化も含め、ことごとくヨーロッパ人(白人)の侵略によって滅ぼされるか変容を余儀なくされてしまったが、アンデス文明の場合、その一部は現代でもまだ根付いている。たとえば、地方へ行けば、インカ期から続くアイリュと呼ばれる血縁・地縁組織が機能している所もある。農具でも斜面の多い土地ではインカ期とほとんど変わらない踏み鋤が用いられている。そして、インカ期に建造されたテラス状の段々畑(アンデネス)が現代まで継続して利用されている。いまだテンジクネズミ(クイ)を食肉用家畜として飼養していたり、ラクダ科動物のキャラバン隊も存在する。トウモロコシから作られた酒チチャを農耕儀礼などの時に皆で饗するのも、インカ期から見られる習慣である。 ヨーロッパ人による物質的な征服に続いて行われたのは、魂の征服である。つまり、キリスト教布教のため先住民の持っていた独自の宗教は弾圧を受けた。その後、カトリック化が進み、また征服以降しばらく続いた異教徒弾圧などで、アンデス文明に存在した精神世界は徹底的に破壊されたが、それでも形を変え現代でも生き残っている。特に、大地の神パチャママへの信仰は、先住民社会に深く残っている。また、都市部においても祭りなどの中にパチャママ信仰に基づく慣習があり、アンデス地域に住む人々に広く浸透している。なお、これら在来の神は、カトリックの聖人と同一視されることが多い。このようなシンクレティズムが現代アンデス先住民の精神文化の特徴となっている。
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