てんかん患者の自動車運転について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:21 UTC 版)
「てんかん」の記事における「てんかん患者の自動車運転について」の解説
てんかん患者の自動車運転については旧道路交通法(昭和35年6月25日 法律第105号)において「次の各号のいずれかに該当する者に対しては、免許を与えない。(中略)精神病者、精神薄弱者、てんかん病者、目が見えない者、耳がきこえない者又は口がきけない者」と記されていた。しかし、2002年5月13日の道路交通法および同法施行令の改正により、条件つきでてんかん患者が免許取得できる道が開かれた。 てんかん患者が運転免許を取得できる条件は以下の3つである。 発作が再発するおそれがないもの 発作が再発しても意識障害および運動障害がもたらされないもの 発作が睡眠中に限り再発するもの てんかん患者への運転免許解禁以降、運転者の発作・急病が原因の交通事故も頻発している。2011年には254件発生しており、このうちてんかんによる事故はその28.7%を占める73件である。同年のてんかんによる交通事故のうち、5件は死人が出ている。 上記3条件に合致しない、本来なら不適格とされる者の違法免許取得・更新も相次いでおり、2012年にはてんかん持ちであることを隠して免許を取得・更新したとして逮捕者が出た。 てんかんを原因とした下記のような重大事故の発生を受け、2012年10月に、警察庁に設置された一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会(座長・藤原静雄)による提言がなされ、これを受け運転に支障のある者が免許取得・更新時に虚偽申告を行った場合に罰則を設ける改正道路交通法が2013年6月14日に公布された(実際の施行はここから1年以内)。てんかんを含む意識障害をもたらす病気に関係する改正の要点は以下の通り。 都道府県公安委員会は運転免許を取得・更新する者に対して、運転に支障をきたす恐れのある病気の有無に関する質問票を交付できる。 この質問票で虚偽申告した場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金を課すことができる。 医師は患者が免許停止・取り消しに該当する病状であることを知った場合、公安委員会へ届け出ることができる(守秘義務違反とならないことを保証)。 医師から患者が免許を受けているか否かの問い合わせがあった場合、公安委員会はこれに回答することが求められる。 病気が疑われた場合、公安委員会は、3か月を限度として、一時的に免許を停止できる。 病気を理由に免許が失効した場合でも、病状が改善すれば条件つきで一部試験を免除して再取得できる。 2013年11月27日、従来の危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の中間的な処罰を定めた「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(通称:自動車運転死傷行為処罰法)が成立した(施行は2014年5月20日)。同法第三条2項により、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気で人を負傷させた場合は最高12年以下の、死亡させた場合は最高15年以下の懲役に処せられる。てんかんは、政令によりこの「運転に支障を及ぼすおそれがある病気」に該当するとされた。これまでは、てんかん発作を原因とする死亡事故は自動車運転過失致死傷罪でしか裁けなかったが(持病は危険運転致死傷罪の要件とならないため)、同法により、より重い刑罰を科することが可能となった。 てんかん患者のうち、投薬によって発作が制御できるのは7~8割とされ、残りの2~3割は発作の制御はできないという現状が報じられている。 詳細は「運転免許に関する欠格条項問題」を参照
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