【AGM-88】(えーじーえむはちじゅうはち)
レーダーを使用した敵の防空設備を破壊するために使用される対レーダーミサイルで、空対地ミサイルの一種。
HARM(ハーム)(High-speed Anti-Radiation Missile)とも呼ばれる。
AGM-45「シュライク」・AGM-78「スタンダードARM」の後継として開発された。
AN/ASQ-213HTSを用い照準を行い、発射後はパッシブレーダーシーカーでSAMサイトなどのレーダーから出るレーダー波を追って追跡する。
途中、レーダー波が途切れても、INSによって最後に発信された位置を記憶し、そこに向かって飛翔する。
電波周波数はCバンド~Jバンドまで対応可能で、地上レーダーサイトやSAMやAAAの照準用レーダー他、艦船の装備するレーダーにも有効である。
発射時のコールはMAGNUM(マグナム)。
スペックデータ
全長:4.14m/4.17m(HDAM)
直径:25.4cm
翼幅:1.13m
発射重量:363kg
射程:125km
速度:Mach 2+
推進装置:固体推進
エンジン:チオコール T/YSR-113-TC-1 デュアル推力低煙固体ロケットモーター
弾頭:
・WDU-21/B 爆風破砕弾頭(66kg、AGM-88A・AGM-88B)
・WAU-11/B 模擬弾頭(ATM-88A)
・WDU-37/B 爆風破砕弾頭(AGM-88C-1)
信管:FMU-111/Bレーザー近接信管
誘導方式:慣性/パッシブレーダー誘導
誘導装置:
・WGU-2/B(AGM-88A ブロック1)
・WGU-2A/B(AGM-88A ブロック2)
・WGU-2B/B(AGM-88B)
・WGU-2C/B(AGM-88C-1)
・WGU-48/B(AGM-88E)
バリエーション
- AGM-88A
ブロック1と呼ばれる初期生産型。
しかし、データの書き換えや再プログラムを行う際にはシーカーをメーカーに送り返さなければならず、非効率であったため、ソフトウェアを変更し、メモリーを再プログラム可能なEPROMメモリにしたブロック2が開発された。
- AGM-88B
コンピュータのハードウェアが改善されたタイプ。
ブロック3改修では、PBモードの機能が追加されるとともに、列線での再プログラムができるようになった。
- AGM-88C-1
弾頭、誘導装置及びソフトウェアが変更され、 TOOモードが追加されたタイプ。
- AGM-88C-2
シーカーを低コストシーカーに変更したタイプ。試作のみ。
- AGM-88D
GPS/IMUが組み込まれたタイプ。
INSはリング・レーザー・ジャイロを使用する。
- AGM-88E「AARGM」
AGM-88Dをベースに、デュアル・シーカー誘導装置や新型の制御装置を装備したタイプ。
AAGRMとは、Advanced Anti-Radiation Guided Missile(先進対電波源誘導ミサイル)の略である。
終末誘導にはGPS/IMUだけでなく、MMWI(アクティブ・ミリメートル波画像)レーダーシーカー又はIIR(長波長赤外線画像)シーカーを使用する。
- HDAM
ドイツのBGT(Bodenseewerk Gerätetechnik GmBH)から支援を受けてアメリカのレイセオンが開発しているAGM-88の機能向上システム。
誘導装置と制御装置が変更されており、AGM-88Eと同じく誘導装置にはGPS/IMUを備えている。
INSには光ファイバー・ジャイロが採用されている。
また、ミサイルの制御装置はMIL-STD-1553データバスと互換性があるため、航空機側の機器を改修する必要が無く、飛行中にパイロットがプログラムを変更する際の柔軟性が高められている。
- ATM-88A/B/C
訓練弾。模擬弾頭を搭載。
- CATM-88A/B/C
機上訓練用のキャプティブ弾モデル。
- DATM-88A/B
搭載要員訓練用、機器操作及び再プログラミング模擬訓練用のダミー弾。
搭載機種

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