"Discussion"の役割と構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 06:31 UTC 版)
「IMRAD」の記事における「"Discussion"の役割と構成」の解説
"Discussion"では、概してResultsで示したデータがどのような傾向を示しているのか、あるいはどのような意味を持つのか、それはなぜかをといったことを説明する。 IMRaD形式の論文における“Discussion”という用語の和訳は、(議論ではなく)考察である。国語辞典であるデジタル大辞泉によると、「考察」とは「物事を明らかにするために、よく調べて考えをめぐらすこと」と記載されている。ゴウビルド英英辞典には“Discussion”の定義として“the examination or consideration of a matter in speech or writing”と記されている 。 George M. Hallらの記した文献には、Discussionのパートには以下のことが記されるべきと書かれている。 研究結果の要点:この研究の結果得られた主要な知見とその意義を記載する。 Methodの評価:研究手法の長所・短所、妥当性について率直にコメントする。 先行研究との比較:自身の研究と先行研究で得られた知見の類似性・相違点、あるいは先行研究と統合することで得られる知見について言及する。 理論的・応用的含意:今後の理論的研究や応用にとってどのような意味があるかを述べる。 今後の発展:研究で明らかにできなかった点等、今後この分野でどのような研究が求められるか自分の考えを書く。 また、ある者は、以下のような類型化をした解説をしており、 ◆検証型の考察 1 結果を再確認する 2 結果を解釈する 3 結果と仮説との関係を示す 4 原因を推測する 5 予想と異なる結果について述べる ◆論証型の考察 1.中心的な問題や考察の視点を示す 2.ある前提・条件・仮定のもとに議論する 3.問いを立てて考察をすすめる 4.比較して論を展開する 5.対比させて論を展開する 6.原因・結果を述べる 7.根拠に基いて判断や主張を述べる 8.問題点や反論を受け止めたうえで主張を述べる 9.これまでの考察の要点を整理する さらに、結果や結論のパートの記載と対比している。 ◆結果(Results); 1 図表でデータを掲示する 2 データの傾向を述べる 3 データの相違を述べる 4 変化の有無、傾向を指摘する 5 判明した事項を述べる ◆結論Conclusion 1.研究行動を振り返る 2.研究結果をまとめる 3.研究結果から結論を提示する 4.研究結果を評価する 英文校閲業者エナゴ社のブログによるとには、 ◆「考察」とは、「研究結果」で著した事実の解釈を論じ、「序論」で提示した問題点に答えるだけでなく、それが研究対象項目の理:解に、今後どう影響するかを考える場所でなくれはならない。そのためには、「考察」で語られる視点が、「序論」で仮説を立てた視点から、もっと先へ移行していなければならない。 ◆考察では結果を主要な再論すべきであるが、詳細な説明に焦点をあてるのは誤りで、「Aの値の急激な減少は・・・を意味する」のようにデータの意義に焦点をあてた書き方にすべきである。 ◆「考察」で新しい研究結果を提示するのは御法度である。全体の関係を明確にするために、「考察」で新しい表やグラフを導入したり、新たにほかの研究を引用したりするのは構わないが、どんな些細なことでも、「考察」で議論される研究結果は、すべて「研究結果」で紹介されたものでなければならない。 といったことが書かれている。 何が書かれるべきであるかということについて、大雑把なレベルでは多くの者の見解は一致するが、具体的なレベルになるといろいろなパタンがあり、論旨や分野によって最適な形態は変わってくる。上記以外にも、例えば、"Discussion"で得られる結論(提案する学説)は、通常は、Introductionにて「明らかにする」と述べられているはずであるが、必要に応じこのパートに事柄明記してもよい。別の見方をすると、提案する学説と、実験結果との間をつなぐ推論過程(論拠)を記述、説明するのが、このパートであり、先述の「トゥルーミンの三角ロジック」においては、「推論過程」に相当することを記載する。 Discussionに記述する結論、即ち論文全体で提案する学説は、Introductionで発した問い(つまり論文の主題)の解でなければならない。ただし、Introductionで発した問いのほうを、「解」にあわせて記述するため、この問題については、深く考える必要は実のところは大きくない(書き方の問題としては非常に重要であるが)。 必要に応じ、研究目的の達成度合いを評価をここですべき場合もある。なお、前述のとおり、ここで提案する学説の根拠として、Resultで示した実験結果に加え、必要に応じて、他の研究結果を引用することはよくあるが、ここで引用する他者(過去の自分を含む)研究結果は、通常はIntroductionあるいは、Methodでそれに触れておかなければならない。必要に応じた詳述をここで行うことも可能である。
※この「"Discussion"の役割と構成」の解説は、「IMRAD」の解説の一部です。
「"Discussion"の役割と構成」を含む「IMRAD」の記事については、「IMRAD」の概要を参照ください。
- "Discussion"の役割と構成のページへのリンク