情報処理技術者試験 試験実施の詳細

情報処理技術者試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/23 13:56 UTC 版)

試験実施の詳細

試験の実施については、情報処理技術者試験規則(昭和45年通商産業省令第59号)の定めるところによる。その詳細は、試験実施の都度、あらかじめ官報に公示されるとともに、受験案内書において説明される。

試験の実施時期

試験の機会は、原則CBT形式で行われるITパスポート・基本情報技術者・情報セキュリティマネジメントを除き、下記のとおり春期・秋期の年2回である。但し、受験者が数万人規模となる試験区分を除き、実施されるのは春期又は秋期の1回のみである。

  • 春期:4月第3日曜日
  • 秋期:10月第3日曜日
  • 基本情報技術者・情報セキュリティマネジメント・ITパスポート(CBT形式):通年(試験会場により、実施日・実施時刻は異なる)

筆記試験では、応用情報技術者のみ年2回実施である。ITパスポート・基本情報技術者・情報セキュリティマネジメントについても、身体障害者など、CBTでの受験が困難である人向けに用意されている筆記試験での試験が同様に年2回実施で行われる(こちらは健常者の受験は不可であり、身体障害者手帳または医師の診断書の提出が必須である)。かつては初級システムアドミニストレータ・基本情報技術者及び(2005年より)ソフトウェア開発技術者であった。また、2016年までは情報セキュリティスペシャリストも年2回の対象であったが、後述のとおり2017年より情報処理安全確保支援士(RISS)に移行される(移行後も、年2回実施で変わらず実施される)。

秋期試験は例年、不動産関連資格である宅地建物取引士(宅建)試験と日程が重複するため、情報処理技術者試験と宅建試験の両方の受験を検討している場合は注意が必要である。年2回実施の区分や春期のみ実施の区分はともかく、特に秋期のみ実施の区分を受験する場合、その年は宅建試験の受験はできなくなる。逆に宅建試験を受験した年は、情報処理技術者試験の秋期試験が受験できない。

なお以下のとおり、災害発生時などには特別対応を行うケースがあり、以下はその実例。

東日本大震災の影響

平成23年度春期試験(当初2011年4月17日実施予定)は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震東日本大震災)及び東京電力福島第一原子力発電所での事故などの影響により中止され[5]平成23年度特別情報処理技術者試験として実施することが決定した[6][7]。春期試験で行われる試験区分のうち、応用情報技術者及び高度試験は6月26日、ITパスポート・基本情報技術者は7月10日と分けて延期して実施された。この試験は春期試験に申し込んでいなくても、4月に設けられた追加募集期間でも出願でき、6月26日実施の試験と7月10日実施の試験を両方受験することもできた。逆に、春期試験に申し込んでいて特別情報処理技術者試験の受験を希望しない場合は、次回試験への振り替え(秋期でも実施される試験区分は平成23年度秋期に、春期のみ行われる試験区分は平成24年度春期)、または受験料の返金での対応が行われた。

2016年熊本地震の影響

平成28年度春期試験(2016年4月17日実施)は、4月14日に発生した平成28年(2016年)熊本地震の影響により、試験前日の4月16日に九州の試験地で中止を決定した(ただし、沖縄県那覇試験地は通常どおり試験実施)[8]。九州(除・那覇)の試験地で申し込んでいた、または熊本地震における災害救助法適用市町村在住の受験者については、次回試験への振り替え(秋期でも実施される試験区分は平成28年度秋期に、春期のみ行われる試験区分は平成29年度春期)、または受験料の返金での対応が行われた。平成28年度春期試験を、別の日に振替(前述の東日本大震災での対応)や、隣県など受験可能な試験会場に行って受験する(例・北九州試験地の受験者が、山口試験地で受験する)などの措置は行わなかった(試験地変更申し込みは2016年3月31日で締め切られており不可能)。そのため、九州(除・那覇)の受験者にとっては他都道府県と比較して受験機会を1回失うことになった。

なお、4月15日の段階では、熊本地震で被害の大きかった熊本試験地のみを中止の対象としていたが、その後大分県などを震源地とする地震なども多数発生していることを踏まえ、試験前日の4月16日に那覇を除く九州全ての試験地での中止を決定した。

令和元年東日本台風の影響

令和元年度秋期試験(2019年10月20日実施)は、10月12日に関東地方などに上陸し、東日本の広い範囲で甚大な被害が発生した令和元年東日本台風(台風19号)の影響により、台風被害の大きかった地域では特別対応が行われた[9]

具体的には、千曲川阿武隈川の決壊により大きな被害のあった長野試験地・郡山試験地(福島県)では、交通機関の運休区間が多岐にわたっていたことから、試験開始時刻の繰り下げが行われた。また、東京試験地の試験会場の1つである東京都市大学世田谷キャンパス(東京都世田谷区)では、付近の多摩川の越水により校舎が被災したため、東京都内にある複数の貸会議室等に会場を変更して実施した。その他前述の震災同様に、災害救助法適用市町村在住の受験者については、受験料の返金での対応が行われた。あわせて、これらが直前の変更だったことなどを踏まえ、郡山試験地で鉄道の不通により受験会場に行けなかった場合や、東京都市大学世田谷キャンパスからの変更を知らずに行ってしまった人、変更後の貸会議室などに間に合わなかった・行くことができなかった人なども受験料返金対応の対象となった[10]

2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

令和2年度春期試験の中止・10月試験への延期計画

令和2年度春期試験(2020年4月19日実施予定)は、2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を避けるため中止となり、申込み者全員に対する受験料の返金での対応が行われる[11]。2020年6月30日時点では、年2回実施の試験区分については代替試験を実施しない方向で検討されていた。また、春期のみ実施の試験区分については例年の秋期試験開催日(10月第3日曜日)にあたる2020年10月18日での代替試験を実施する方向で検討されていた。但し、2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防確保などの状況次第にて、春期のみ実施の試験区分の代替試験については2020年11月以降での実施を目指すことも検討されていた[12]

年2回実施の試験区分および春期のみ実施の試験区分については例年の秋期試験開催日(10月第3日曜日)にあたる2020年10月18日に令和2年度10月試験の名称で実施する方向で検討されていた。年2回実施の試験区分については、令和2年度に限り、年1回のみの実施となる予定とされていた。また、秋期のみ実施の試験区分は2020年11月以降に実施する方向で検討されていた(この試験の名称は特に決定していなかった)[12]。また、受験申し込みはインターネット経由のみに変更となる(ただし、身体障害者など特別措置が必要な場合に書類郵送が必要な場合があるため、この場合に限り紙の願書も用意されている)。

令和2年度10月試験について(一部試験の形式変更・中止)

2020年9月18日、当初予定していた令和2年度10月試験(2020年10月18日)のうち情報セキュリティマネジメントと基本情報処理技術者の2種目について試験日程を延期すること、および、年度内の別途示す日をもってCBT方式に切り替えて実施することを発表した。なお、この2種目については令和3年度以降もCBTでの実施を継続することが同日付の報道資料において謳われている。当該種目の受験予定者に対する試験料は返還され、CBT方式での受験を希望する者は再度の申し込みが必要となる。なお、それ以外の7区分(ITパスポートの身体障害者向け筆記試験・応用情報・情報処理安全確保支援士・データベース・エンベデッド・プロジェクトマネージャ・システム監査)は、予定通り10月に実施する予定である。更に、11月以降に実施するとされていた、秋期のみ実施の試験区分は令和2年度の試験が中止となり、令和3年度春期試験にて実施する予定であることも発表された[13]

更に、2020年10月2日に、5つの試験地について試験会場を十分に確保できなかったために、試験地を変更する会場も発生した。また、試験地そのものは変更ないものの、試験地内で実施する大学や会場などを変更したケースも発生した。具体的には以下のとおり[14][15]

  • 申込者全員が試験地変更
    • 滋賀(京都に変更)
  • 申込者の一部が試験地変更
    • 埼玉(東京に変更)
    • 柏(千葉に変更)
    • 藤沢(横浜に変更)
    • 神戸(大阪に変更)
試験区分毎の対応
例年ならば年2回(春期・秋期)実施される試験区分

上記3区分に関しては、令和2年度は10月に「令和2年度10月試験」として実施された。中止となった春期の代替試験は行わない。

上記2区分については、令和2年度中の2020年12月から2021年3月の間に、CBT形式にて複数日試験を設ける方向で検討されている。情報セキュリティマネジメント試験は2020年12月に、基本情報技術者試験は2021年1月から3月の間に実施された。なお、ITパスポート同様に、身体障害者などに配慮し筆記試験も引き続き実施されるが、これについては令和2年度の中止が決定し、令和3年度春期試験で実施される。それ以降も、CBT形式にて春期・秋期それぞれの期間中に試験が実施される[16]

令和元年度まで、春期に年1回実施されていた試験区分(令和2年度以降は秋期に変更)

これら4区分に関しては、令和2年度は10月に「令和2年度10月試験」として実施される。令和3年度以降についても、事実上の高度試験の枠交換で、秋期試験として実施される。

令和元年度まで、秋期に年1回実施されていた試験区分(令和3年度以降は春期に変更)

これら4区分に関しては、令和2年度の中止が決定し、令和3年度春期試験で実施される。令和4年度以降についても、事実上の高度試験の枠交換で、春期試験として実施される。

試験地

筆記試験

年2回の筆記試験については、各都道府県に1箇所以上設けられている[注 1]。基本的には1つの都道府県に1箇所か2箇所であるが、2023年からは以下の通り例外がある[17]

受験を希望する試験地を出願時に記入し、願書の到着が早い順に、受験者の郵便番号から勘案して試験会場(高校、大学、専門学校、イベント会場・貸会議室[注 3]、試験運営を行う会社(日本通運ランスタッド[19])の関連施設)が割り振られる。ただし、各試験地で収容能力を超えた場合は同一道府県内の他地域に設置された試験会場又は他の試験地が指定される場合がある。団体受験で試験会場となる学校に通っている場合は、自動的にその学校での受験となる(例・神奈川県に住んでいる受験者が試験会場となっている東京の学校に通学している場合は、神奈川県内ではなくその東京の学校で受験する)。受験者数の少ない試験地(地方都市など)や、エンベデッドシステムスペシャリストなどの受験者数が少ない高度試験の場合は、試験会場が1箇所しか設けられないこともあり、願書をいつ提出してもその会場での受験となる。

2012年春期からは、全ての会場で全試験区分を受験可能になった。過去には以下のような制約が生じており、特に高度試験においては地域により不便が生じることがあった。

  • 2011年までは、唯一神奈川県だけは「横浜・川崎」(後の「横浜」)・「藤沢」・「厚木」のいずれの会場も全試験区分の受験会場とはなっていなかった(ITパスポート・基本情報技術者など一部試験区分に限られる)。この他、「八王子」も受験可能な試験区分が限られており、神奈川県や多摩地域在住で高度試験を受験する場合は、大抵の場合「東京」で受験することになっていた。
    • 但し、上記4会場であっても、身体障害者特別措置により受験する場合は、申請された障害の度合いにもよるが全試験区分において受験の受け入れは行われていた。
  • それ以前も「東京」・「土浦」(2019年秋期で廃止、2020年10月試験以降は「つくば」に変更)・「水戸」・「宇都宮」・「前橋」を除く関東地方の全試験地(上記の他「埼玉」・「千葉」・「柏」)、及び関西地区の「大阪」・「姫路」(2022年秋期で廃止)を除く全試験地(「京都」・「奈良」・「滋賀」・「神戸」・「和歌山」)においても、受験可能な試験区分が限られていた(例・滋賀県在住で高度試験を受験する場合は、「大阪」「福井」・「岐阜」などで受験する必要があった)。
  • 現在山陰地区においては「鳥取」・「松江」で全試験区分受験可能である。かつて2004年春期までは、春期が「松江」のみ、秋期が「米子」のみで実施されていた。

CBT形式

CBT形式で行われる試験区分については、試験にパソコンが必要なので、パソコンが使用できるパソコン教室や情報系の専門学校、および試験運営を受託している民間企業(ITパスポートでは当初は興和だったが、現在は日立製作所プロメトリック[20]。基本情報・情報セキュリティマネジメントは年2回試験時はプロメトリック、通年試験化以降はCBTソリューションズ)の施設などが指定される。各都道府県に最低1箇所は設けられているが、筆記試験の試験会場となっている市に必ず会場があるとは限らない(例として2020年現在、関東で筆記試験の試験会場である前橋市内のITパスポート用の会場は設けられておらず、群馬県内では高崎市または太田市の会場で受験する必要がある)。

受験手数料

  • 7,500円(2021年度秋期実施分から。ただし、CBT方式で実施する試験区分(ITパスポート試験・基本情報技術者試験及び情報セキュリティマネジメント試験)については、政令施行前に、令和3年度試験の実施が官報(令和3年3月26日付(第460号))で公示済みのため、令和3年度試験(2022年3月31日まで実施)においては経過措置が適用され、5,700円に据え置き。)[21]

  1. ^ 原則として都道府県庁所在地では受験できるが、福島県郡山三重県四日市などの例外あり。全都道府県に1箇所以上の試験会場が設けられたのは、2001年からである。奈良県では、2000年まで試験会場が設置されなかった。ただし、全47都道府県で春期・秋期いずれも受験可能になったのは、後述する山陰地区で改善された2004年秋期以降である。
  2. ^ 2022年まで、神奈川県内では「横浜」(川崎相模原を含む)・「藤沢」(茅ヶ崎平塚小田原を含む)・「厚木」の計3箇所。千葉県内では「千葉(市)」・「」の計2箇所。東京都内では「東京」「八王子」の計2箇所が設けられていた。この変更により、例えば千葉市内を希望するにしても柏市内を希望するにしても、「千葉」を選択するようになった。
  3. ^ 東京における東京ビッグサイト東京流通センター、横浜におけるパシフィコ横浜、千葉における幕張メッセ、柏における東葛テクノプラザなどといったイベント会場で試験実施実績がある[18]
  4. ^ 情報工学の分野において、「キロ」や「メガ」などのSI接頭辞を、国際単位系(SI)の定めに従わず、俗習として1024(210)倍を示す場合があるのは、コンピュータが内部ですべての数値を2進数に置き換えて処理していることと、1024(210)が概ね1000(103)であること、及び、代表的なOSMicrosoft WindowsmacOSなど)にて記憶媒体の容量やファイルサイズの換算に用いていることが主な理由である。
  5. ^ 但し、午前I試験中に途中退出した場合は採点されないため、例え基準点以上の回答をしたとしてもこの場合は除外される。
  6. ^ 例えば、警視庁では、警察官採用試験の第1次試験の成績の一部に利用される[23]
  7. ^ 2009年(平成21年)試験廃止
  8. ^ 2016年(平成28年)試験開始
  9. ^ 1971年(昭和46年)試験開始
  10. ^ 1988年(昭和63年)試験開始
  11. ^ 2006年(平成18年)試験開始
  12. ^ 高度人材ポイント制において、従事しようとする業務に関連する外国の資格等は通常1件(5ポイント)しかポイント獲得できないが、相互認証対象資格は日本の国家資格と同じ枠で2件(5ポイント×2=10ポイント)まで獲得できる[46]






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